【法務NAVIまとめ】クーリングオフ制度を中心とした消費者対応まとめ
2016/08/15 消費者取引関連法務, 消費者契約法, 特定商取引法, その他
はじめに
昨今の消費者保護法制の強化の流れの中で、商品を販売する企業にとって、消費者のクレーム対応が発生する場合があります。そこで、特定商取引法上、企業法務担者が留意しておくことが望ましい事項をまとめました。
特定商取引法の対象となる販売方法
・訪問販売
例:訪問販売の販売員から健康食品を購入した
アンケートに答えるように、エステサロンに誘導され、エステサロンの契約を締結した
・通信販売
例:通販サイトで、衣服を購入した
・電話勧誘販売
例:電話で「資格がとれる」と勧誘され、高額のセミナーを受講する契約を結んだ
・連鎖販売取引
※個人を販売員として勧誘し、さらに次の販売員を勧誘させるというかたちで、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務(サービス)の取引のこと
例:友達を誘うだけで、利益が得られると健康食品の販売を行うことになった
・特定継続的役務提供
※長期・継続的な役務(サービス)の提供をする取引のこと
例:家庭教師・結婚相手などの紹介サービス、パソコン教室
・業務提供誘因販売取引
※「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと
例:商品のモニターになると儲かると勧誘されて、商品自体を購入させられた
・訪問購入
例:貴金属の訪問買い取りサービス
・送り付け商法
例:高齢者をターゲットとして健康食品を送り付ける
消費者が考えること
やっぱり、この商品いらないかも・・・
返品したい
払ったお金を返してもらいたい
このような、消費者の側の意図を実現するために、消費者保護法制が機能しています。
クーリングオフ制度~消費者保護の強力な制度
消費者側に与えられた法的手段として、例えば、「クーリングオフ制度」があります。 これは、契約締結後に、頭を冷やす期間を与えたうえで、さらに契約を締結するかどうかを消費者側に選択させる大変強力な消費者保護の制度です。
クーリングオフの期間は、原則として「法定書面を受け取った時から8日間」となります。しかし、一定の販売類型では、20日間との期間が定められている場合もあり、特定商取引法以外の法令で特に保護されている場合もあります。
※クーリングオフの意思表示を書面でしなければ、成立しない
例えば、はがきや内容証明郵便でクーリングオフは成立するが、電話や口頭で直接申し出ても、クーリングオフが成立したことにはならない
クーリングオフ制度の効果
クーリングオフが成立すると、契約が解除されます。代金を受け取っていた場合には、返金しなければなりません。すでに工事などを行っていた場合には、その費用も事業者が負担することになるなど、事業者に経済的負担が課される場合もあります。
それでは、いかに企業側は対応する必要があるか
・クレームを発生させない
・クレームが発生した場合に備えて、契約時の法的な手続を万全にしておく
・紛争に発展した場合の対応方法を確立しておく
①クレームを発生させないor クレームに対する適切な対処
法的な手続きに発展しないために、まずはクレームを発生させないことが肝要といえます。しかし、現場担当者で抑えられない場合に、社内的なクレーム対応マニュアルを策定することや、研修体制を整えるなどの方法が考えられます。
参照 必見!消費者センターから学ぶ本当のクレーム対応術 Qualia Partners LCC
②クレームが発生した場合に備えて、契約時の法的な手続きを万全にしておく
クーリングオフの期間経過後であっても、消費者側は法定書面の不備を指摘して、
クーリングオフを主張してくる場合があります。
そこで、法定書面の交付の記載事項に漏れがないか、確実に交付されているか、確認する必要があります。
□ 商品の販売価格
□ 代金の支払い時期と方法
□ 商品の引渡時期
□ クーリング・オフの告知(赤枠で囲み赤字で記載すること)
□ 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、代表者の氏名
□ 販売担当者の氏名
□ 申込日または契約日
□ 商品名及び商標または製造者名
□ 商品の型式や種類、数量など
※印鑑の押印は法定記載事項ではありません
また、消費者契約法上の不実の告知取り消しの主張に対応するために、告知事項を記録して証拠化するなどの工夫も必要となります。
③紛争に発展した場合の対応方法を確立しておく
万が一、紛争に発展した場合には、弁護士などを通じて、交渉や訴訟対応が発生することが考えられます。
さいごに
現在の消費者保護法制は、消費者契約法、特定商取引法、割賦販売法、訪問販売法、など、消費者の側に手厚い法整備がなされています。特定商取引法上のクーリングオフの期間が経過していても、他の法令で保護されているため、契約の解消を主張してくる場合などもあり、法務担当者としては紛争予防の観点から万全の態勢を整えておく必要があります。 改正の現況など、弊社サイトの過去の記事もご参照ください。
参照 特定商取引法の平成28年改正について
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