公式SNSによるトラブルと対応まとめ
2017/10/21 広告法務, 民法・商法, 著作権法, 景品表示法
1 はじめに
最近、様々なSNS上に公式アカウントをもつ企業が増えています。製品やイベント等についての宣伝・広告効果が望めるほか、企業イメージの向上にもつながっています。一方で、2017年7月には、企業の公式アカウントが他社製品を批判したことによって当該アカウントの閉鎖に発展するという事態も生じています。そこで、本記事では企業の公式アカウントをめぐる法的なリスクと対応についてまとめます。本記事の最後にはSNS投稿の際に使えるチェックリストがついていますので、ぜひご活用ください。
2 リスク
SNSにおいて発信された情報は世界中に広がることになります。そして、インターネット上に一旦書き込まれた情報を完全に削除することは事実上不可能といえます。したがって、生じうるリスクも多種多様です。今回は情報発信における問題点に絞って、考えられる問題と主要な法律関係について見ていきたいと思います。
2-1 情報漏えい
一番に想起されるのは、自社の情報漏えいの危険性です。意図して発信した内容が情報漏えいに当たるという場合も考えられますが、PC画面や机上の飲食物など別のものを撮影した画像の中に内部文書の一部が写っているといったケース、画像に含まれる位置情報から担当者の所在地を知られてしまう場合など、まったく意図しない形での漏えいの危険も考えられます。
自社の重要な情報が漏えいするだけでなく、情報の内容によっては第三者から損害賠償請求を受ける可能性もありますので、注意が必要です。
<参考記事>
「どう防げばいいのか? SNSによる情報漏えいが増えている」(ITmediaビジネス)
2-2 名誉棄損
SNS上の書き込みが名誉棄損に該当してしまうという危険性もあります。他社製品を批判ないし値踏みするような投稿は「個人の感想」という注意書きがあったとしても、企業の公式アカウントを利用して行うべきではないでしょう。製品の製造元会社から民事上の損害賠償請求(民法723条)を受ける危険性があります。
<参考記事>
「SNSへの投稿でも名誉棄損になりうる?どんな場合に名誉棄損にあたるかを解説」(法律情報サイトALG+)
2-3 比較広告
また、他社製品と自社製品とを比較するような文言を使うと、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)に違反する可能性があります。景品表示法5条1項は、自己の供給する商品又は役務の取引について、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」表示をしてはならないと定めています。
2-4 著作権違反
画像等を投稿する際にも、自ら撮影したもの以外を用いる場合には著作権の問題を生ずるおそれがあります。著作権フリーの画像や素材を利用するなどして、著作権侵害にならないよう注意する必要があります。
<参考記事>
「『あれもこれもダメ』ではダメ――弁護士と企業法務が語る『ストックフォト』」(ITmediaNEWS)
3 おわりに
以上のような危険を回避するため、「ソーシャルメディアポリシー」を策定し、普段から(個人のアカウントも含めた)SNSの利用についての社員教育を進めておく必要があります。加えて、公式アカウントを新設する場合には、アカウントの実際の運営を行う担当者の事前教育が大切になります。個人のSNSアカウントでは黙認されるような事態でも、企業の公式アカウントが行った場合には許されないことも少なくありません。上記リスクを踏まえて適切な事前指導を行う必要があります。以下のチェックリストを参考に、投稿者は毎回必須項目についてチェックしてから投稿をするといったルールを作っておくとよいでしょう。
<参考記事>
「企業のソーシャルメディアポリシー作成に役立つ25のベストプラクティス」(SEOジャパン)
【今日から使える! 投稿前のチェックリスト】
そのつぶやき、
□未発表の製品情報や顧客データなど、社外秘の情報が含まれていませんか?
□画像の中に書類、PC画面、反射物への写り込みなど、意図したもの以外が写り込んでいませんか?
□SNSの位置情報に関する設定がOFFになっていますか?
□他社製品の批判など、誰かの評価を傷つけるような内容が含まれていませんか?
□自社製品の紹介をする場合に、他社製品と比べるような言葉を使っていませんか?
□画像は自分で撮ったもの、もしくは著作権フリー素材ですか?
(文責: tanioka)
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