海外に進出する日本の弁護士 -アジア進出の中小企業を手助け-
2013/07/18 海外法務, 海外進出, 外国法, 士業事務所
事案の概要
アジアに進出する中小企業をサポートすべく、日本の弁護士たちが現地に事務所を構えたり、法的サービスを提供したりする動きが加速している。90年代に入ってから、日本の法律事務所は海外に拠点を置き始めているが、当初は中国が中心であった。しかし、昨今、自前の法務部門をもたない中小企業の海外進出が増加し、2010年からは東南アジア方面にも事務所設置が拡大している。
近年、弁護士の就職難が問題となっているが、弁護士の活躍の場が日本だけでなく、海外に広がることも期待できる。
中小企業の海外進出支援に弁護士が関わるようになってきていることは、弁護士会も注目している。日本弁護士会連合(日弁連)は中小企業を対象に、海外支援弁護士を紹介する「中小企業の海外展開支援弁護士紹介制度」(リンク先参照)を発足させている。本制度で対象とする業務は、主に以下の3つである。
①海外展開に伴う現地でのトラブルや法的リスクの予防、対処など一般的な予防法務
②海外企業との取引のための契約書作成
③契約中の海外企業との間でトラブルになった場合、問題点を整理して、道筋をつけるアドバイスをする
また福岡県弁護士会は、九州を地盤とする中小企業の海外進出支援をすべく、現地での法人設立手続きや従業員の採用などについて、法的な助言を手掛ける窓口を弁護士会に設置している。
コメント
企業の海外進出(特にアジア諸国)においては、例えば生産拠点を作る場合の土地の購入、工場の建設コスト、人件費コストも日本よりも極めて低額で済むというメリットがある。また、特に飲食店は店舗数が多ければ多いほど、設備や備品の販売先から安いものを調達できる。更には、日本と比べて法人税等の税金が有利な国もある。
経済のグローバル化が進み、国内大企業がこのようなメリットを求めて、生産拠点を海外へシフトしている。そして、日本のモノづくりを支える中小企業もこれまで以上に、海外進出が望まれている。しかし、経営資源が豊富な大企業でさえ、相当のリスクを伴う海外進出は、中小企業にとってはその事業継続を賭けた大問題である。海外進出をする際に、経営者としてはまず、資金や原材料の仕入れ等を気にするが、契約や特許等の法律問題も無視できない。海外での商慣習や法律は、日本のそれと異なることが多く、気付かずにトラブルに巻き込まれることも少なくないだろう。
中小企業にとっては、特に上記①及び②が重要であると考える。トラブルが法的紛争へと発展し、海外で訴訟となった場合、現地弁護士費用、翻訳コスト等で高額な費用がかかるからである。弁護士が、現地の情報をもとに、それを踏まえた法的リスクの見極めと予防策についてアドバイスをすることが重要になってくると考える。
中小企業の海外進出の際は、弁護士がサポートをすることで、法的トラブルを回避し、企業の力を存分に発揮できる環境づくりが今後ますます望まれる。
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