【インドネシア】インドネシア語以外の契約は無効の可能性も?
2013/12/05 海外法務, 海外進出, 外国法, その他
事案の概要
海外企業と契約を締結する場合英語で行われることが一般的だが、インドネシアでは契約の内容を精査する以前に、使用言語に注意する必要が出てくるかもしれない。英語で契約を締結した場合、契約そのものが無効と判断される場合があるというのだ。
実際インドネシアの地方裁判所で、英文で締結された契約書を無効とする判決が出ている。
ジャカルタの地方裁判所は2013年7月10日、インドネシア企業とアメリカ企業との間の貸付契約を無効であると判断した。
これは両者間で締結された英文契約が、インドネシア当事者と契約を結ぶ際には、インドネシア語を使用しなければならないとした法律(Article 31 of Law No. 24 of 2009 )に違反したと判断されたためである。
本法は、インドネシア語の利用を促進するために制定されたものであるが、その適用範囲については問題となっていた。本法に反して英文契約が結ばれた場合契約は無効となるのか、後にインドネシア語に訳した契約書を作成すれば足りるのか等、不明確な部分が多いからである。
このような懸念に対して政府当局は、言語は契約内容の本質に関わるものではなく、形式上のことなので英文契約も有効であるとの見解を示していた。
しかし上記地裁は同法律上の「使用しなければならない(is required to)」を広く解し、契約は無効であるとの判断を下した。
そもそも、上記のように本法は適用範囲に関して議論があったために、2年以内に詳細を定めた施行規則が制定される予定であったが、いまだ未制定のままである。上記判決はこのような法律の不備が関わっているが、法律の規定が不明確ゆえに政治的思惑が介入し易いといえる。本法律が、母国語の一層の利用を促進するための保守的思想を背景にしているとの指摘もあるため、司法府内の保守派の意見が判決に反映されているとの見方もできる。インドネシアではこのように法制面に関して問題が多く、アジア諸国の中でも法実務上十分なリスク管理が必要である。
英文契約書とともにインドネシア語の契約書も作成するのは、コストが掛かるため、現在実務においては、インドネシア語の翻訳を作成した場合に、英文契約の内容を優先させるとの条項を加えた英文契約書のみを作成することで対応しているようである。
今回の判決は地裁レベルであるため、大きな影響はないと見られているが、最高裁においてどのような判断がなされるか注目される。
関連コンテンツ
新着情報
- ニュース
- 郵便局が配達業者から不当に違約金を徴収か、公取委が指導2025.1.15
- NEW
- 宅配便の配達を委託する業者から不当に違約金を徴収していたとして、日本郵便株式会社が昨年6月に公...
- 業務効率化
- ContractS CLM公式資料ダウンロード
- セミナー
- 石黒 浩 氏(大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻 教授 (栄誉教授))
- 安野 たかひろ 氏(AIエンジニア・起業家・SF作家)
- 稲葉 譲 氏(稲葉総合法律事務所 代表パートナー)
- 藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
- 上野 元 氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー)
- 三浦 亮太 氏(三浦法律事務所 法人パートナー)
- 板谷 隆平 弁護士(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 山口 憲和 氏(三菱電機株式会社 上席執行役員 法務・リスクマネジメント統括部長)
- 塚本 洋樹 氏(株式会社クボタ 法務部長)
- 【12/6まで配信中】MNTSQ Meeting 2024 新時代の法務力 ~社会変化とこれからの事業貢献とは~
- 終了
- 2024/12/06
- 23:59~23:59
- まとめ
- 改正障害者差別解消法が施行、事業者に合理的配慮の提供義務2024.4.3
- 障害者差別解消法が改正され、4月1日に施行されました。これにより、事業者による障害のある人への...
- 業務効率化
- Mercator® by Citco公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 平田 堅大弁護士
- 弁護士法人かなめ 福岡事務所
- 〒812-0027
福岡県福岡市博多区下川端町10−5 博多麹屋番ビル 401号
- 解説動画
- 加藤 賢弁護士
- 【無料】上場企業・IPO準備企業の会社法務部門・総務部門・経理部門の担当者が知っておきたい金融商品取引法の開示規制の基礎
- 終了
- 視聴時間1時間
- 解説動画
- 江嵜 宗利弁護士
- 【無料】今更聞けない!? 改正電気通信事業法とウェブサービス
- 終了
- 視聴時間53分
- 弁護士
- 水守 真由弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号