特許庁が「模倣被害調査報告書」を発表~アジア諸国の模倣品事情~
2014/04/18 知財・ライセンス, 特許法, その他
特許庁は2013年度における、日本企業の国内外の模倣品被害の実態についてとりまとめ「模倣被害調査報告書」として発表した。
同報告書によれば、模倣品の被害総額については減少しているものの、アジア地域を中心として模倣品被害は深刻な状態にあるとしている。海外の模倣品被害を国別に見てみると中国が67.8%、台湾が21.3%、次いで韓国の21.1%、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、フィリピンのASEAN諸国6カ国が20.2%を占めている。
以下では被害の多い中国、台湾、韓国とASEAN数国の模倣品の現状について見てみたい。
アジア諸国の模倣品事情
【中国】
見た目はそっくりに作り商標を付けずに販売する、正規品であることを示す識別シールを模倣して添付する、外観を模倣せずに中身の機能部分を模倣する等、手口は巧妙化している。権利を出願し保護されうる体制を確保する、ネット上の情報を定期的にチェックし模倣品が出回っている場合は削除要請するなどの対策は勿論のこと、現地の調査会社を利用することで効果的に摘発することもできる。
業界団体としての活動や、他企業と連携して活動を行う企業も増えてきている。企業間で連携することで、模倣品情報や模倣品対策のノウハウの共有が期待できる。
ジェトロが主催する日系企業の団体である知的財産権問題研究グループ(IPG)は情報共有、研究活動だけでなく現地政府との協力活動も積極的に行っている。また欧米企業を中心とする団体であるQBPCの共同摘発に参加する企業も増えている。共同摘発による押収量の増加、摘発コストの削減のほか、模倣品対策に積極的な欧米企業のノウハウを吸収できるという面でも効果的である。
【台湾】
台湾においては商標だけでなく、容器や包装の輪郭、大きさ、形、色、デザインの印象、感触素材なども含めた概念である「トレードドレス」も知的財産として保護の対象であり、これをめぐる争いも多い。
カルピス社の商品包装のデザインと類似するデザインを他社が使用した事例やKFC社のデザインに類似した看板や容器を他社が使用していた事例で、違法であるとの判断が示されている。
近時は捜査機関内に模倣品取締り専門の「保智大隊」を組織したり、知財裁判所を設立し訴訟審理の効率化及び裁判官の専門化を図るなど、制度面の整備も進んでいる。
【韓国】
在日韓国系の企業が韓国から輸入した模倣商品が、ネット販売やオークションサイトに流れてくることが多い。税関と連携しての水際対策が重要と言える。
韓国の知的財産の法制度は日本のそれと類似しているため、保護のレベルの程度も高いが、日本の商標の冒認出願が横行するなど問題点も多い。
韓国政府としても刑事罰の量刑強化や損害額の推定規定の改正、デッドコピー規制の導入等を内容とする不正競争防止法の改正をする等、制度面での改善がされつつある。
【ASEAN諸国】
①インドネシア
インドネシアの模倣品の多くは中国からの流入であると考えられている。このため水際で取り締まることが重要となるが、この点に関して2012年最高裁が商標権などの侵害が疑われる輸出入品に対する一時差し止め命令に関する規則、知的財産権侵害に対する仮処分決定に関する規則を制定した。
②タイ
知的財産権の権利化に関して、特に特許審査が長期化するという問題があり、そのため模倣品対策に支障をきたしている。商標、著作権絡みの模倣品事件では、民事訴訟によると長期化する傾向があるので刑事訴訟によるのが一般的である。
③マレーシア
日本企業の著作権を侵害するDVDに、マレーシア政府発行のオプティカルディスクラベル(マレーシア政府が審査の上、コンテンツの権利の許諾を受けていると認定したもの)が貼付され店頭やインターネット上で多数流通していたこが発覚し、日本政府が早期改善を要求した。当局による審査体制の不十分さが浮き彫りになっている。
④シンガポール
シンガポールはアジア諸国の中では模倣品の流通が少ない国である。これは国境における適切な水際対策、権利侵害の申し立てに対する迅速な対応によるものである。また2014年施行の改正特許法によりシンガポールの特許権付与の方式が欧米や日本に類似したものとなる等、更なる制度面の整備を行っている。
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