行政不服審査法改正 経緯や内容、今後についてみる
2014/08/13 法改正対応, 法改正, その他
改正行政不服審査法の概要
平成26年6月13日、改正行政不服審査法が公布された。公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。行政不服審査法は、昭和37年制定以来、50年以上実質的な法改正がなされていなかった。
改正に至った経緯
平成25年 5月:パブリックコメント(「行政不服審査制度の見直しについて(案)」に関する意見募集)
平成25年 6月:総務省として「行政不服審査制度の見直し方針」を決定
平成26年 3月:行政不服審査法関連3法案を国会提出
平成26年 6月:行政不服審査法関連3法案が成立・公布 ※法律施行5年経過後に法律の見直しを検討
改正の内容
改正の目的は、①公正性の向上、②使いやすさの向上、③国民の救済手段の充実・拡大にある。以下、具体的にみていく。
①公正性の向上
第三者が国民と処分庁の主張を整理することで、公正さを向上させる。
(1)審理において、職員のうち処分に関与しない者(審理員)が、両者の主張を公正に審理(9条)
※現在、審査請求の審理を行う者について法律に規定がなく、処分関係者が審理を行うことがありうる。
(2)裁決について、有識者から成る第三者機関が点検(43条)
(3)審理手続における審査請求人の権利を拡充
※証拠書類等の閲覧・謄写(38条)、口頭意見陳述における処分庁への質問(31条5項)など。
②使いやすさの向上
専門知識の乏しい国民でも利用しやすい制度にする。
(1)不服申立てをすることができる期間を60日から3か月に延長(18条)
(2)不服申立ての手続を審査請求に一元化
※現行は上級行政庁がない場合は処分庁に「異議申立て」をするが、処分庁から説明を受ける機会が与えられていないなど「審査請求」と手続が異なる。「異議申立て」をなくし「審査請求」に一元化(2条)することで、こうした問題が解消される。
(3)標準審理期間の設定(16条)、争点・証拠の事前整理手続の導入(37条)などにより、迅速な審理を確保
(4)不服申立前置の見直し
③国民の救済手段の充実・拡大
不利益な行政処分を受けた国民がさまざまな手段を講じて救済を受けられるようにする。
(1)(法令違反の事実を発見すれば)是正のための処分等を求めることができる。(36条の3)
(2)(法律の要件に適合しない行政指導を受けたと思う場合に)中止等を求めることができる。(36条の2)
コメント
行政不服審査とは、行政処分に関し、国民がその見直しを求め、行政庁に不服を申し立てる手続のことをいう。国と地方公共団体に共通に適用され、税、社会保険、生活保護など、原則、全ての行政分野が対象となっている。簡易迅速な手続により、手数料無料で国民の権利利益を救済することが特徴となっている。
これまで行政不服審査法は、50年以上の長期に渡り実質的な改正がなされていなかった。もっとも、近年の国民の権利意識の変化等を理由に、今回改正がなされたと思われる。
平成23年度の不服申立件数は、約4万8千件となっている。平成17年度が約3万1千件、平成20年度が約4万7千件であり、その数は年々増加傾向にある。今回、簡易かつ公平な制度に改正されたことで、不服申立件数はさらに増加することになるだろう。
今後は、50年間改正せずに放置されてきた過去の反省を踏まえ、状況に応じた柔軟で迅速な改正が求められる。今回の改正は、その第一歩になるものと思われる。
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