内部告発者と企業の関係は変化するか
2015/01/06 法務相談一般, 民法・商法, その他
匿名性の高い内部告発サイトが日本にも誕生
企業など組織の不正を告発したい人が、匿名でジャーナリストに情報を届けることができるサイト「内部告発.jp」が2015年に開設される予定だ。
開発者は駿河台大学経済学部専任講師の八田真行氏。「Tor(トーア)」と呼ばれる暗号化技術を用いて、告発者の匿名性が守られる仕組みになっているという。
内部告発サイトとしては「ウィキリークス」が世界的に有名であるが、匿名性の高い日本版告発サイトの開設により、不正の告発を促進するのが狙いだ。
詳しい内容はこちら身元を特定されず、ジャーナリストに告発情報を届けるサイト「内部告発.jp」始動へ
公益通報者保護法による告発者の保護
内部告発者の法的保護については、公益通報者保護法に規定されている。
同法では、組織内部、行政機関、外部の事業者(マスコミなど)に不正目的でなく内部告発を行った労働者は保護される。公益通報を理由とした解雇や降格、減給などの不利益な取り扱いは禁止されている。
もっとも、あらゆる通報が対象になるのではなく、個人の生命、身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保などに関わる法律に規定する犯罪行為に対象が限定されている。
(例えば刑法、食品衛生法、金融商品取引法、JAS法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、独占禁止法 など)
内部告発サイトの誕生が告発者に与える影響
内部告発者は公益通報保護法によって保護されているとはいえ、上記のような犯罪行為に関わる事例に限定されている。道義上問題であっても、犯罪に関わらない場合には保護の対象にならない。
また通報の対象が、内部から行政機関、外部事業者と外部性が高まるにつれ保護の要件も厳格になる。例えばマスコミに告発する場合には、「公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合」という要件を満たさなければ保護されないことになる。
また、公益通報者保護法で禁止されているのは、告発者への解雇や降格、減給といった、分かりやすい形での処分である。(表向きは正当な理由での)人事異動や配置転換、職務内容の変更が行われる可能性もある。それが不当であるかどうかの判断は困難だ。
匿名性の高い告発サイトが誕生すれば、内部告発を行うリスクはかなり軽減される。今後外部への告発が増えていくことも考えられる。
一方、企業を始めとした組織の側にとっては、外部への告発が増えるのは好ましい事態ではない。一度ネガティブな情報が外に出れば、それは広範に拡散し、著しいイメージの低下を招く。
組織の側としては、いきなり外部への告発ではなく、組織内部に告発してもらえるような組織制度を構築しておく必要がある。 匿名の通報も受付け、通報の方法も面談に限らず電話、FAX、Eメールなどにも対応する。調査権限を明確にし早期の回答を行う。また告発者を他の従業員に特定されないように、複数部署にまたがってカモフラージュ調査を行うといった体制を整えておく必要がある。
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