経営統合で相乗効果を
2015/03/19 商事法務, 戦略法務, 会社法, その他
経営統合で相乗効果を
コンビニエンスストア業界3番手の「ファミリーマート」と、4番手の「サークルKサンクス」を傘下に持つユニーグループ・ホールディングスは、3月10日、の共同会見を開き、両社が経営統合に向けた協議に入ることを発表した。近年、業界を問わず、大企業の経営統合をよく目にする。たとえば、タカラトミー社や、KADOKAWA・DWANGO社、損保ジャパン日本興亜ホールディングスと言ったように、社名を合体させた企業名は枚挙にいとまがないほどである。
そこで、今回は経営統合の法的性質と、メリットデメリットを考えてみる。
経営統合の方法
経営統合の方法は、概ね4つに分けられる。
①合併
会社法上の手続きに従って、2つ以上の会社が組織上1つになる統合方法(代表例:三井住友銀行)。
合併には、吸収合併(会社法2条27号)と新設合併(会社法2号28号)があるが、実際の合併では吸収合併がほとんどである。これは、新設合併だと株式上場申請を要することや、各種許認可や免許の再取得が必要となるなど、事務手続きの処理が非常に煩雑となるためである。合併の場合には、合併契約締結の上、両会社において株主総会決議の特別決議を要する(会社法782条1項以下、309条2項12号)。
≪メリット≫
合併経営統合については、既存企業を存続させるないし、新設することで企業統治を完全統一できる。その際、各企業の必要な部分のみ存続させることで、リストラ効果及びシナジー効果を短期間に得やすいというメリットがある。
≪デメリット≫
他方、吸収合併の場合には、吸収される側の企業が消滅してしまうため、抵抗が強く、吸収する側としても、消滅会社から引継いだ債務について、債権者に対して直接責任を負うことになる点でリスクを負うデメリットがある。また、新設の場合には、各種手続きが煩雑という事もデメリットとなる。
②持株会社の設立
2つ以上の会社が、持株会社を作り、その100%子会社となる方法。
持株会社の設立には、株式交換(会社法2条31号)、株式移転(会社法2条32号)の他、自社の事業を子会社に事業譲渡(会社法467条1項)ないし会社分割し(会社法2条29号)、自社が持株会社となる方法がある。
≪メリット≫
買い手企業は新株を発行すればよいので、資金を使わなくて済む、被買収企業の株主の3分の2以上の賛成があれば、少数株主を強制排除できるといったメリットがある他、会社が消滅しないので、子会社の許認可等も継続できるといったメリットがある。
≪デメリット≫
他方、持株方式による経営統合では合併と異なり、会社が一体にならないので、シナジーが得にくく、効率化に時間を要するという点がデメリットとなる。
➂子会社化
一方が、他方の会社の株式の過半数を支配し、経営を支配する方法。株式公開買付けを(TOB)等の株式取得の方法によって行う。金融証券取引法第27条の2は、有価証券報告書の提出が義務付けられている株式会社等(証券取引所に上場する株式会社など)が株式を発行者以外の者が市場外で一定数以上の買付けする場合、原則として公開買付けによらねばならないと定めており、一定の場合において公開買い付けを義務付けている。
≪メリット≫
親会社、子会社間の上下関係により、事業の一貫化ができるようになる。
≪デメリット≫
他方、親会社の経営方針に子会社が左右される関係になることから、株式取得に敵対する場合が多く、経営権を巡って株式公開買い付けが泥沼化しかねないというデメリットがある。
④資本提携
一方が他方の、もしくはお互いに、少数の株式を保有しつつ、両企業の経営の独立を維持しつつ業務の提携を図る方法である。
≪メリット≫
両企業において相互に経営に参画してもらったり、財務面で支援してもらうなど、より強力な関係を構築することができ、M&Aに近い効果が得られる点でメリットがある。
≪デメリット≫
他方、資本提携は上記と異なり、両企業の独立性は維持されるので、経営に一定の参加権を与えることで機密情報などの情報が漏えいしかねない等、社内戦略上、の問題がある。
コメント
今回のファミリーマートと、ユニーグループ・ホールディングスの経営統合は、②持株会社設立の方法によるものと予想される。特にコンビニエンス業界ではセブンイレブンの一人勝ちの状況にある。業界3位と4位が経営統合したとしても、未だセブンイレブンに売上高は及ばない状況である。経営統合によるシナジー効果を発揮して、セブンイレブンに対抗できる企業になりうるかが注目される。
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