ファミマ店主は「労働者」岡山に続き、都労働委員会も同様の判断
2015/04/21 労務法務, フランチャイズ, 労働法全般, その他
事実の概要
東京都労働委員会は4月16日、ファミリーマートのフランチャイズ加盟店の店主らで結成する労働組合「ファミリーマート加盟店ユニオン」がファミリーマート本部に対して再契約の可否を決定する具体的な判断基準について団体交渉に応じるよう求めていた件で、本部に対し速やかかつ誠実に団体交渉に応じるよう命じました。
加盟店と本部の関係において、加盟店主を事業者ではなく労働組合法上の「労働者」とみなすとの判断は、昨年3月の岡山県労働委員会によるセブンイレブン・ジャパンへの命令に続いて2つ目です。(岡山の事案については中央労働委員会で再審中)
※フランチャイズ契約
一方が自己の商号・商標などを使用する権利や自己の開発した商品・サービスを提供する権利、営業上のノウハウなどを提供し、他方がこれに対して対価を支払う約束によって成り立つ事業契約をいいます。
※団体交渉権
労働組合が労働者の生活を守るため、労働条件などの労働関係について使用者と交渉を行う権利のことをいいます。労働者の団体交渉権は、憲法上、労働基本権として保障され (28条) 、労働組合法もこれを確認しています (1条1項) 。
問題の所在・判断のポイント
本件の問題の所在は、(1)そもそも本件のフランチャイズ加盟店の店主は労働組合法上の「労働者」に当たり団体交渉権を有するか(逆に、本部は「使用者」に当たるのか)、(2)団体交渉権を有するとして、本部が個々の加盟者と話合いを行うと回答し団体交渉に応じなかったことが、正当な理由なく団体交渉を拒否したことに当たり許されないのではないのか(労働組合法7条)という点です。
(1)について
コンビニの店主の場合には、直接雇用主がいるわけではなく店主として人を雇って管理する立場にあり、本部から見れば単に契約の相手方であって労働組合法のいう「労働者」とは言えないようにも思われます。しかし、東京都労働委員会は、以下①~⑥にポイントを示すように、本部と加盟店の関係においては使用者・被用者の関係に近い実態があり、本件における加盟者は、労働組合法上の「労働者」に当たると判断しました。
①加盟者は、本部の事業を遂行する上で不可欠な労働力として組織内に組み込まれていること
②フランチャイズ契約の内容は本部によってあらかじめ定型的に定められたものであること
③加盟者の得る金員は、実質的には労務提供に対する対価やそれに類する収入としての性格を有するものであること
④契約当事者の力関係において大きな差があり、本部からの業務の依頼に応ずべき関係にあること
⑤加盟者が就業時間やマニュアルに基づく清掃など本部の指揮監督の下で労務提供している実態があること
⑥加盟者が仕入先を選べないなど店舗経営において裁量が小さく、顕著な事業者性を備えているとはいえないこと
(2)について
また、労働組合法では、団体交渉を申し入れた事項が、労働組合の組合員の労働条件その他の待遇、または労働組合と使用者との団体的労使関係の運営に関する事項であり、使用者に処分可能なものであれば、使用者側は必ず団体交渉に応じなければならないことになっています。本件の団体交渉の申し入れ事項である「再契約の可否の基準」は「労働条件その他の待遇」に当たり、本部が組合との団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉拒否にあたり団体交渉に応じるように命令が下されました。
コメント
現在、コンビニエンスストア全体の売上高は約20兆円にも上り、「フランチャイズビジネス」というひとつの産業分野を形成しています。そして、今後も店舗数が増え更なる売上高の増加が予想されます。その下でなされた今回の東京都労働委員会の判断は、そのビジネスモデルへ大きな影響を与える可能性があります。今後、中央労働委員会や裁判所がどのような判断をするのか注目されるところです。
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