電子商取引準則の改定内容
2015/05/27 契約法務, 民法・商法, 著作権法, その他
4月27日に「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が改定された。
改訂内容は「著作権法の改正に伴う修正」、「新たな裁判例に伴う修正」、「論点の削除」の3つとなっている。
インターネットの発達に伴って、ウェブ上での取引が活発になっているので、事業者としては、随時確認しておく必要がある。
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を改訂しました(経産省HP)
「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」
電子商取引に関する、様々な法的問題点について、関連法令がどのように適用されるのかを明らかにし、取引の円滑化図るために、策定されたもの。
電子商取引や情報財取引等の実務、関連する技術の動向、国内外のルール整備の状況に応じて、随時改訂が行われている。
改定の内容
①著作権法の改正に伴う修正
著作権法の改正(平成 26 年法律第 35 号)で、電子出版物に対応した出版権の整備が行われたことに伴って、修正が行われた。
従来、出版者は著作権者から許諾を受けて電子出版物の公衆送信を行っていたが、法改正により、出版者は著作権者から電子出版物の公衆送信について出版権の設定を受けられるようになった。出版権の設定を受けた出版者は、著作権者の承諾を得て、配信事業者に対して電子出版物の公衆送信を許諾することができることとなった。
これを受け、以下の内容が準則に追記された。
「配信事業者の電子出版物の配信権限は、作家等著作権者から権限を与えられた出版社から、電子書籍取次事業者を介して与えられることが多い。配信事業者と取次事業者の契約が終了した場合や出版社や電子書籍取次事業者が権限を失った場合、配信事業者は配信権限を失う。
配信事業者が配信権限を失った場合、再配信についても著作権者と出版社、出版社と電子書籍取次事業者、電子書籍取次事業者と配信事業者との間で特に取り決めない限り、配信事業者は電子出版物を再配信することはできない。」とされている。
②新たな裁判例に伴う追記
Ⅰウェブ上での情報サービス提供事業者の違法情報媒介責任について、「第三者が他のウェブページに掲載した児童ポルノのURLを貼る行為」が、児童ポルノ公然陳列罪となると判断した最高裁決定(最高裁平成24年7月9日)が追記された。
リンク先のウェブページ作成者だけでなく、リンクを貼って、情報の所在を掲載したに過ぎないものが、処罰対象となったことに、サイト運営者は留意する必要がある。
Ⅱ他人のホームページにリンクを張る場合 (無断リンク)について、著作権侵害が行われているウェブサイトにリンクを張る行為に関連する裁判例が追記された。
従来から、準則では、不正に利益を得たり、リンク先に損害を与えるといった目的がある場合を除いては、他人のホームページにリンクを張る行為は原則自由とされていた。
大阪地裁判決(平成25年6月20日)は、著作権侵害が行われているウェブサイトにリンクを張る行為について、リンクを張る行為は公衆送信権侵害に当たらないと判示した。また、公衆送信権侵害の幇助行為としての不法行為の成否についても、その成立は否定された。
もっとも、これは「違法にアップロードされている著作物であるか否かが内容や体裁上明らかではないこと」を理由に否定されたものである。
リンク先の動画等がその内容や体裁上から、無断でアップロードされていることが明らかである場合はリンクを貼らないほうが得策であるといえる。
③論点の削除
薬事法・健康増進法による規制、貸金業法等による規制、管轄合意条項の有効性などは削除された。時間の経過や状況の変化等により、問題が不存在となったり、相対的に重要度が低下したなどの理由(他に詳細なガイドラインが存在する、法律改正が行われたなどの理由)からである。
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