化学物資管理の再確認
2015/08/18 業法対応, 民法・商法, その他
日本の化学物質管理制度
日本における化学物質の管理は、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下「化管法」という。)により規制されている。化管法は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的として制定された。化管法には、PRTR制度と化管法SDS制度が規定されており、この法律の柱となっている。
PRTR制度の概要
PRTR制度とは、事業者が人体に有害な物質を環境(大気、水、土壌)に排出する際、または事業所外に廃棄物として移動する際にはその量を把握して国に届け出をし、国は届出データや推計に基づき、排出量及び移動量を集計し公表するという制度である。国民は、国に対し、事業者が届け出たデータの開示を請求することができる。PRTR制度の対象となる化学物質は、化管法に「第一種指定化学物質」として定義されており、ベンジン、ダイオキシン類、臭化メチル、鉛、CFC、石綿等、計462物質が指定されている。対象事業者は、①対象業種として政令で指定されている24種類の業種に属する事業を営んでいる事業者、②常時使用する従業員の数が21人以上の事業者、③いずれかの第一種指定化学物質の年間取扱量が1トン以上の事業所を有する事業者等又は、他法令で定める特定の施設を設置している事業者、の要件全てに該当する事業者である。PRTR制度に反し、届出義務を負う事業者が届出をせず、又は虚偽の届け出をした場合には、20万円以下の過料が課される。
化管法SDS制度の概要
化管法SDS制度とは、事業者が化管法で指定された「化学物質又はそれを含有する製品」(以下「化学品」という。)を他の事業者に譲渡又は提供する際に、その化学品の特性及び取扱いに関する情報を化管法SDS(安全データシート)により事前に提供すること、及びラベルによって表示をすることを事業者に努力義務として課す制度である。対象物質は、「第一種指定化学物質」及び「第二種指定化学物質」と定義されており、「第二種指定化学物質」にはアセトアミド、ウレタン、クロロアセトアルデヒド等、計100物質が指定されている。対象事業者は全ての事業者であり、PRTR制度のような限定はされていない。化管法SDS制度の対象に当たるかどうかは、経済産業省の作成した「対象事業者 判定フロー」に従って判断することになる。化管法SDS制度は努力義務であるが、経済産業大臣は、SDSによる情報提供義務に違反する事業者に対して勧告することができ、それに従わない場合はその旨を公表することができる。また、経済産業大臣はSDSによる情報提供に関して報告させることができ、この報告をしない者又は虚偽の報告をした者に対しては20万円以下の過料が課される。
コメント
天津の大規模爆発の衝撃的な映像は記憶に新しい。化学物質は、管理を一歩間違うと重大な事故を引き起こすことになる。化管法SDS制度により、化学物質の保管者が特定され、管理責任の所在がはっきりする。また、PRTR制度により、国民は化学物質の所在を把握することができ、危険を察知することができる。このように有害物質の管理につき透明化を図ることにより、企業の化学物質管理に対する意識が高まり、事故の防止に繋がると考える。さらに、これらの制度に違反して事故をおこした企業は、損害賠償を請求される際に過失責任を問われる可能性が高く、この面からも企業の意識向上に繋がるであろう。企業においては、化学物質の管理には細心の注意を払っていると思うが、今一度化管法を確認し、管理の徹底に努めて欲しい。
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