違反件数5980件で過去最多、下請法違反について
2016/06/03 コンプライアンス, 下請法, その他
はじめに
公正取引委員会は1日、2015年度の下請法違反による指導件数が5980件で過去最多となったことを発表しました。厳しい経済状況が続く下請け業者ですが、下請法によってどのように保護されているのか見ていきたいと思います。
下請法とは
下請法とは、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、下請代金の支払い遅延等を防止し、立場の弱い下請業者の正当な利益・権利を保護することを目的とする法律です。下請法が適用される場合、親事業者には下請業者に対し書面の交付、下請代金の支払期日の明示、遅延利息の支払い等が義務付けられ、買い叩き、返品等が禁止されます。一定の規模の企業が製造委託、修理委託、役務提供委託等をする場合に適用されることになります。
下請法が適用される場合
下請法が適用される親事業者・下請業者はそれぞれの資本金の額によって決まります。下請法2条7項、8項各号によりますと、製造・修理委託の場合①委託側の企業の資本金が3億円を超え、請け負う側の企業の資本金が3億円以下、②委託側の企業の資本金が1千万円を超え3億円以下、請け負う側の企業の資本金が1千万円以下の場合にそれぞれが親事業者、下請業者の関係となり下請法が適用されます。それ以外にも情報成果物委託、役務提供委託の場合の適用資本金関係が規定されております。
親事業者の義務
(1)発注書面の交付義務
親事業者は委託契約後直ちに下請業者に対して、給付の内容、下請代金、支払期日等を記載した書面を交付しなければなりません。この書面は下請業者の承諾があれば、公正取引委員会規則で定める方式の電磁書面により提供することもできます(3条1項、2項)。
(2)支払期日を定める義務
親事業者は下請代金の支払期日について、下請業者から給付や役務の提供を受けた日から60日以内であり、できるだけ短い期間内で定める必要があります(2条の2、1項)。定められた期日がこの規定に違反する場合には受領日から60日経過する日の前日が支払日とみなされます。また期日が定められなかった場合は受領日が支払日となります(同2項)。
(3)遅延利息の支払義務
親事業者が上記支払期日までに下請代金を支払わなかった場合、下請業者から給付等を受領した日の60日後から支払完了まで年率14.6%を日数に乗じた金額を遅延利息として支払わなければなりません(4条の2)。
親事業者の禁止事項
4条各号には親事業者が下請業者に対して行ってはならない事項が列挙されております。具体的には①下請業者に責任がないのに受領を拒むこと②下請代金不払い③下請業者に責任がないのに代金を減額すること④一旦受領した物を返品すること⑤通常に比べて著しく低い下請代金を定めること⑥正当な理由なく親事業者の製品等を下請業者に買い取らせること⑦下請法違反を通報したことを理由に報復として取引の停止等を行うこと⑧金融機関で割引が困難な手形を交付すること⑨親事業者のために金銭その他の役務の供給を強いること等が挙げられております。
違反した場合
これら下請法の規定に違反した場合には公正取引委員会により禁止行為の取止め、原状回復、再発防止といった措置を求める勧告がなされることになります(7条)。この勧告は行政指導ではなく法令に基いた一定の拘束力を持ち、従わなかった場合には独禁法の規定に従い排除措置命令や課徴金納付命令が課される場合があります。また勧告を受けると企業名、違反内容等が公表されます。書面交付義務に違反した場合には50万円以下の罰金も規定されております(10条)。
コメント
委託契約において何らかの問題が生じた場合、下請法による救済が受けられないかを検討する必要があります。まず自社と相手企業の資本金の額から下請法が適用されるかどうかを調べ、上記の規定に抵触する疑いがある場合には中小企業庁や公取委に問い合わせることが第一歩だと言えます。アベノミクスにより大企業が最高益を記録するなか、それを支える中小企業への下請法違反もまた過去最高を記録しています。下請業者である中小企業の経済状況は今なお改善していないということだと言えます。親事業者からの取引を切られた場合、たちまち経営が成り立たなくなる下請業者にとってある程度の不合理は飲まざるをえないのが現状なのかもしれませんが、今一度契約内容や履行状況を見直し見ることが重要と言えるでしょう。
新着情報
- 業務効率化
- Lecheck公式資料ダウンロード
- まとめ
- 改正障害者差別解消法が施行、事業者に合理的配慮の提供義務2024.4.3
- 障害者差別解消法が改正され、4月1日に施行されました。これにより、事業者による障害のある人への...
- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 岡 伸夫弁護士
- 【無料】監査等委員会設置会社への移行手続きの検討 (最近の法令・他社動向等を踏まえて)
- 終了
- 視聴時間57分
- 弁護士
- 水守 真由弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 弁護士
- 平田 堅大弁護士
- 弁護士法人かなめ 福岡事務所
- 〒812-0027
福岡県福岡市博多区下川端町10−5 博多麹屋番ビル 401号
- セミナー
- 石黒 浩 氏(大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻 教授 (栄誉教授))
- 安野 たかひろ 氏(AIエンジニア・起業家・SF作家)
- 稲葉 譲 氏(稲葉総合法律事務所 代表パートナー)
- 藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
- 上野 元 氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー)
- 三浦 亮太 氏(三浦法律事務所 法人パートナー)
- 板谷 隆平 弁護士(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 山口 憲和 氏(三菱電機株式会社 上席執行役員 法務・リスクマネジメント統括部長)
- 塚本 洋樹 氏(株式会社クボタ 法務部長)
- 【12/6まで配信中】MNTSQ Meeting 2024 新時代の法務力 ~社会変化とこれからの事業貢献とは~
- 終了
- 2024/12/06
- 23:59~23:59
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- ニュース
- 「選択的夫婦別姓」、立民が法案提出へ 公明・国民民主も前向き2025.1.16
- NEW
- 秋の総裁選でも注目された、「選択的夫婦別姓制度」。立憲民主党が同制度の導入を目指し、必要な法案...