ルネサンス あなたのまちの商店街
2016/07/14 不動産法務, 民法・商法, 住宅・不動産
バブルが崩壊して20年以上経つ。失われた20年はやがて30年・・・いやいやあなたのまちのシャッター通りはやがてまちごと消滅の危機に瀕しているのではないか。なぜこんな事態になっているのか、まちの再生の芽は残されているのだろうか。
まちの商店街の衰退の原因とそれに対する対策はなぜ効果を奏しないのか、法的な視点から分析してみた。
1 バブル崩壊期に外圧が加わり、ダブルパンチの中での規制緩和と地方分権の推進 まちの周辺部・外縁の発展と中心商店街衰退の背景との関係
(1)外圧と規制緩和
①Japan as №1
1980年代日本の対米貿易は大幅な黒字となっていた。70年代までは車やテレビ等製品といった個別製品毎の貿易摩擦が問題とされてきたが、80年代に入るとアメリカはこの問題を産業全体、日本を株式会社と見立てた構造的な問題と捉え始めた。
②プラザ合意→円高→(バブルとジャパンバッシング)→規制緩和 因果の流れ
そしてアメリカは1985年にはG7諸国を巻き込んで円高への誘導を図るため、為替市場への協調介入を合意した(プラザ合意)。
それでも円高を乗り越えて伸びる日本企業に対しアメリカは、ブッシュ共和党政権下での日米構造協議に引き続き、クリントン民主党政権下でも日米包括経済協議と強烈なる外圧「日本たたき」を行った。
折しも、円高への対策として公定歩合を低い水準に留めた金融政策はバブル経済を生み、その解消として敷かれたドラステックな金融引き締めや地価税導入が今度は急激なバブル崩壊を招いていた。日本経済は弱くなり始めていたのだ。しかし、この時期にアメリカは日本的商慣行、系列取引、各種非関税障壁を詳細に調べ上げて不公正な日本市場が貿易赤字の元凶だとしてアメリカ基準の市場の開放を求めてきたのである。
規制緩和の潮流はここで一気に加速した。
日本固有の商業ルールは受け入れられなくなった。小売業を含むサービス分野では、経済的な需要を勘案したサービス供給者数の制限等は禁止された。また、多くの外資系流通業が日本に進出するなか、グローバルスタンダード(アメリカンスタンダード?)に沿った円滑な出店の仕組みづくりが求められるようになった。新規出店のターゲットとなったのは郊外、すなわちまちの周辺、外縁であった。
(2)地方分権の推進
1995年(平成7年)に地方分権推進法が制定された。国の権限の地方自治体への委譲が決定された。地方主体、地方分権の方針は、まちの中心市街地の活性化においても取り入れられた。
(3) 大型店出店調整の限界
① 規制緩和の潮流が生まれる前、まちの商店街を守る砦となっていた法律があった。「大規模小売店舗法」である。
② 法制定の経緯
・1960年代半ば(昭和40年代)頃から各地で「スーパーマーケット」を初めとした大型商業店舗の出店が急増し、それに対抗するようにして地元商店街による大型商業施設の進出反対運動も盛り上がりを見せてきた。中小の個人商店にとって、自分の店舗近くに大型店が出店することは、大変な脅威であった。大型店にお客を奪われ、今まで続けてきた商売が成り立たなくなる可能性があった。
・こうした問題を踏まえ、1973年(昭和48年)に旧百貨店法の対象を拡大する形で「大規模小売店舗法」(大店法)が制定され、1974年(昭和49年)より施行された。
③大店法の目的
「大規模小売店舗法」は、地元の中小の小売店が大型店が出店しても大型店と並存して商売を継続できるよう、大型店事業者と地元小売店事業者が事前に出店予定の大型店について協議し、大型店の店舗面積の調整や出店後の相互の協力体制の構築を図る目的で制定された。
④大型店との出店調整の仕組み
・実際に調整にあたるのは商工会議所(商工会)に置かれる商業活動調整委員会。それは商業者・消費者・中立委員の3グループで構成され、中立委員が中心となって調整を進めていた。
⑤大店法の法的効力
・1975年(昭和50年)頃からは、大型店進出が集中するような地域では商業調整が厳しく行われ、出店調整にあたる商工会議所が出店の凍結を宣言する場合も出た。大規模小売店は、大店法によって中小小売店に影響を及ぼす恐れのある場合には、店舗面積や営業時間を減らす等、出店を調整されてきた。
⑥問題点
・こうした保護策にも関わらず、中小小売店の減少には歯止めがかからなかった。
・その原因は、車社会への対応の遅れや、消費者のライフスタイルの多様化、後継者難、中小小売商の適応力の不足など多様な要因が関係していた。
・一方、大型店の増加により、様々な社会的問題も生じてきた。大型店は、消費者のニーズをとらえ買い物利便性を提供したが、一方、地域の 生活環境に様々な影響を与えた。まちの中心部は駐車場の不足により慢性的な交通渋滞を招く等の事例も生じていた。このような問題に対し、大店法の出店調整では、単に事態の悪化を多少遅らせる効果しかなかった。1980年代を迎える頃には、既に新しい対処方策が求められていたのである。
2「大規模小売店舗法」の廃止と「大規模小売店舗立地法」を含めた「まちづくり三法」の制定と改定の経緯
(1)まちづくり三法とは以下の3法を指す。
①改正都市計画法(1998年施行)
・ゾーイング(土地の利用規制)を促進する法律
・ゾーニングにより出店の可否を個別出店案件毎ではなく地域ごとに決めるのが特徴である。特別用途地区を、種類・目的に応じて市町村が柔軟に設定できることとなった。大規模小売店出店のできない地域を「色分け」で示すことも可能となった。
→2006年に建築基準法とともに改正
・延べ床面積が1万平方メートルを超す大型小売店舗などの大規模集客施設の出店は、「商業」「近隣商業」「準工業」の3種の地域のみ出店可
能で、「第二種住居」「準住居」「工業」地域では原則として出店不可とした。
・「市街化調整区域」や「白地地域」などにも原則として出店不可。
・「原則として出店不可」の地域に出店するには、地方自治体による用途地域の変更が必要となる。
・延べ床面積が1万平方メートルを超す飲食店や映画館、スタジアム、娯楽施設なども大規模集客施設とみなし、規制対象に含める。
②大規模小売店舗立地法(2000年施行)
・生活活環境への影響など社会的規制の側面から大型店出店の新たな調整の仕組みを定めた法律
・店舗面積などの量的な側面での商業調整ではなく、生活環境面(交通、騒音、廃棄物、その他)のみからチェックする。
・逆に、大型店も含めた小売商と地域との協調の仕組みがないのが欠点とされた。
→2006年、法改正は行なわれなかったものの、指針の改定等が行なわれた。
【経済産業省 大規模小売店舗立地法の指針の再改定について】
③中心市街地活性化法(1998年施行)
・中心市街地の空洞化を食い止め活性化活動を支援する法律
・市町村が中心市街地を活性化させるための基本計画を策定し、国から認定された場合、各種の支援策が講じられることとなった。
→2006年に改正
・中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進するため、中心市街地の活性化に関する基本理念の創設。
・市町村が作成する基本計画の内閣総理大臣による認定制度の創設。
・支援措置の拡充。
・中心市街地活性化本部の設置等の所要の措置を講ずる。
3 2006年(平成18年)の法改正時にはすでにまちづくり三法のマイナス効果(いわゆるまちの中心部のシャッター通りの増加)が社会問題化しており活発な議論はなされた、、、、はずだった。
4 しかし、あなたのまちの商店街 それとの比較で 郊外のバイパス沿いの景色をもう一度よく眺めていただきたい。
何が起きているのか、そして我々住民は市町村に、または国に何を求めて行くべきなのか考えてみたい。
グローバル化は時流だから、何を言っても詮無きことと諦めてしまったら、あなたのまちは消えてしまうかも。
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