医薬品・化粧品・健康食品等の広告規制
2016/08/24 薬事法務, 広告法務, 薬機法, 医療・医薬品
はじめに
今日,医薬品や化粧品,健康食品などの宣伝を目にしない日はないが,これらの広告は医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下,「薬機法」という)(旧薬事法)によって規制されている。過去には同法に違反して役員が逮捕された例も存在する。そこで,今回は,薬機法の主要な広告規制について取り上げる。
薬機法とは
1.薬機法とは
薬機法とは,「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」(以下,「医薬品等」という)の品質・有効性・安全性の確保等を目的とする法律である。医薬品等の製造・販売・流通に関する規定はもちろん,医薬品等の表示・広告,薬局の開設に関する内容等についても定める法律である。
2.薬機法対象の4種類
(1)医薬品(薬機法(以下省略)第2条第1項)
医薬品とは,病院で医師が処方してくれる薬や,薬局・薬店で市販されている薬などのことをいう。
e.g.医師が処方する薬,薬局で買える風邪薬,胃腸薬,目薬,滋養強壮剤等の市販薬
(2)医薬部外品(第2条第2項)
医薬部外品とは,医薬品ではないが,医薬品に準ずるものをいう。つまり,効能効果が認められた成分は配合されているが,積極的に病気やケガを治すものではなく,予防に重点が置かれたものなどである。
e.g.薬用化粧品,薬用石鹸,育毛剤,除毛剤,浴用剤
(3)化粧品(第2条第3項)
化粧品とは,人の身体を清潔にし,美化し,魅力を増し,容貌を変え,又は皮膚,毛髪を健やかに保つことを目的としたものをいう。
e.g.スキンケア用品,メイクアップ商品,シャンプー,リンス,石鹸,基礎化粧品
(4)医療機器(第2条第4項)
医療機器とは,人や動物の疾病の診断・治療・予防に使用されることや,身体の構造・機能に影響を与えることを目的とする機械器具等をいう。
e.g.電気マッサージ器,磁気治療器,補聴器,体温計,血圧計
3.薬機法における広告とは
以下の全ての要件を満たす場合には,広告に該当し,薬機法の規制を受ける(1998年9月29日付厚生省医薬安全局監視指導課長通知)。
(1)顧客を誘引する意図が明確であること
(2)特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
(3)一般人が認知できる状態であること
▼詳しい説明はこちら
薬事法対策ホームページ研究所
薬機法における広告規制
1.誇大広告等の禁止(第66条)
・医薬品等の名称,製造方法,効能・効果,性能に関する虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布の禁止
・医師等が保証したと誤解を与えるおそれのある記事の広告・記述・流布の禁止
・堕胎暗示,わいせつ文書・図画の使用禁止
2.特定疾病用の医薬品の広告の制限(第67条)
・使用に当たって,高度な専門性が要求される,がん,肉腫及び白血病の医薬品の医薬関係者以外の一般人を対象とする広告の制限
3.承認前の医薬品等の広告の禁止(第68条)
・承認(又は認証)前の医薬品または医薬機器について,その名称,製造方法,効能,効果又は性能に関する広告の禁止
4.上記規制に違反した場合
誇大広告等の禁止(第66条),承認前の医薬品等の広告の禁止(第68条)に違反した場合には,2年以下の懲役または200万円以下の罰金,もしくはその双方が科せられる(第85条第4号,第5号)。
また,特定疾病用の医薬品の広告の制限(第67条)に違反した場合には,1年以下の懲役または100万円以下の罰金,もしくはその双方が科せられる(第86条第15号)。
医薬部外品・化粧品の表現範囲
薬機法対象の4種類のうち,特に医薬部外品,化粧品については,通知により,利用できる表現も細かく決められている。
1.医薬部外品
医薬部外品の効能効果については,製品ごとに厚生労働大臣の承認を受けた範囲内の表現が可能である。
→医薬部外品の広告における薬事法
2.化粧品
化粧品には,事実であれば標榜可能な効能効果が56個定められており,その範囲をこえる表現は使用できない。
→化粧品の広告における薬事法
健康食品と医薬品医療機器等法
1.健康食品と薬機法
健康食品は,厳密には,薬機法対象の4種類に含まれない。しかし,「医薬品と誤認される」「効果の過大解釈により適切な治療を受ける機会を失う」ことを避けるために,同法で取り締まられている。
2.表現範囲
(1)効能効果表現の範囲
①栄養補給を目的とした表現
②健康,美容の維持を目的とした表現
③健康増進を目的とした表現
(2)禁止される効能効果表現
①身体の組織機能の一般増強,増進を主たる目的とする効能効果
②疾病の治療または予防を目的とする効能効果
③医薬品的な効能効果の暗示
近時の摘発事例
薬機法(旧薬事法)違反の罰則・罰金と最近の逮捕事例
有名・大手企業の薬事法(医薬品医療機器等法)違反事例
おわりに
以上のように,薬機法には,かなり厳密な広告規制が置かれている。同法は消費者の身体や生命の安全に直接関わる法律であるため,行政庁も厳しく取り締まっている。実際に,規制に違反した結果,役員が逮捕されたケースも数多くある。役員の逮捕報道が出れば,事業者に致命傷を与えることになる。そのため,同法を遵守した上で,効果的な広告を展開してほしい。
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