イギリスのEU離脱がもたらす影響
2017/01/21 海外法務, 外国法, その他
はじめに
昨年6月23日にEU脱退に関するイギリスの国民投票が実施され、EU離脱派が残留派を上回りました。
その結果を受けて、イギリスはEUから離脱する政策を実施していくことになりました。
EUとは
そもそも、EUとはどのようなものでしょうか。
EUは人・モノ・サービスがEUに加盟する加盟国内では、各加盟国の関税や規制を受けることがなく、自由に移動・取引できるというものです。
その根拠となる法規はリスボン条約です。
また、EU域内で起きた紛争については、欧州司法裁判所が判断します。(リスボン条約第19条)
イギリスのEUの離脱による影響
イギリスがEU離脱による影響とは一体どういうものでしょうか。
それは、イギリスと他のEU加盟国の人・モノ・サービスの移動・取引に関しては、各加盟国の関税や規制を受けることになるという点です。
まず、医薬品についての影響です。
EU域内で医薬品についての許認可等の判断を下すのは、欧州薬品庁(EMA)で、同庁はロンドンに存在します。
我が国を初めとした大手製薬会社は、イギリスに拠点を有しています。
しかしながら、イギリスがEUから離脱することによって、EMAはロンドンから別の加盟国に移ることになります。
離脱に伴い、イギリスでの医薬品の許認可等の基準は、EMAの医薬品の許認可等の基準から、別途イギリスが設ける基準に変更される可能性があります。
更に、イギリス内で製薬した医薬品を他のEU加盟国に輸出すると、輸出する国の関税がかかってしまう問題もあります。
続いて、金融業界についての影響です。
EUは、金融業に関する「単一パスポート制度」があります。
従いまして、ある一つの加盟国でその許可を取れば、加盟国域内で金融業を行うことができます。
ただ、イギリスで金融業に関する許可を取っている企業にとっては、他の加盟国域内で金融業を行うことができなくなる可能性があります。
また、そのような場合、他の加盟国で金融業の許可をとらなければならない可能性があります。
最後に、イギリス国内で起きた紛争は欧州司法裁判所ではなく、イギリスの裁判所が判断を下すということになります。(リスボン条約第50条)
コメント
イギリスのEUの離脱交渉は、これから本格的に始まります。
現状では人・モノ・サービスの移動・取引がどのような制限を受けるか、不透明です。
法務担当者としては、次のような対応をしていく必要が考えられます。
製薬業界についていえば、EMAの許認可等の基準をイギリスが踏襲する可能性もあります。
そこで、法務担当者としては、EMAの基準とイギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)の情報を収集していく必要があります。
それによっては、イギリス内に拠点をとどめる価値がもあるとも考えられます。
また、金融業界についても、以前にイギリスでの許可を取った企業については、引き続きEUで金融業を展開できる可能性もあります。
そのため、法務担当者としては、単一パスポート制度の運用について、注視していく必要があります。
(参照※イギリスの金融行為規制機構:https://www.fca.org.uk/)
製薬業界・金融業に限らず、イギリスに拠点を有する企業は、離脱に関する動向を適時注視していく必要があると考えられます。
そのために、EUの情報をJetro等を用いて随時調査する必要があります。
関連コンテンツ
新着情報
- セミナー
- 豊泉 健二 氏(古河電気工業株式会社 法務部 部長)
- 藤原 総一郎 氏(長島・大野・常松法律事務所 マネージング・パートナー)
- 板谷 隆平 弁護士(MNTSQ株式会社 代表取締役/ 長島・大野・常松法律事務所 弁護士)
- 【12/16まで配信中】CORE 8 による法務部門の革新:古河電気工業に学ぶ 人材育成とナレッジマネジメント
- 終了
- 2024/12/16
- 23:59~23:59
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分
- 業務効率化
- Araxis Merge 資料請求ページ
- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード
- ニュース
- 「選択的夫婦別姓」、立民が法案提出へ 公明・国民民主も前向き2025.1.16
- NEW
- 秋の総裁選でも注目された、「選択的夫婦別姓制度」。立憲民主党が同制度の導入を目指し、必要な法案...
- 解説動画
- 浅田 一樹弁護士
- 【無料】国際契約における準拠法と紛争解決条項
- 終了
- 視聴時間1時間
- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...
- 弁護士
- 大谷 拓己弁護士
- 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-26-2五反田サンハイツビル2階