「今なら無料」GMOに消費者庁が措置命令、有利誤認表示について
2017/03/24 広告法務, 景品表示法, その他
はじめに
インターネット接続契約で「今なら無料」との表示を期間終了後も継続していたとして消費者庁は22日、GMOインターネットに対し再発防止を求める措置命令を出していたことがわかりました。消費者に実際よりも有利であるとの誤認を招く表示を規制する景表法。今回は有利誤認表示とその具体例について見ていきます。
事件の概要
消費者庁の発表によりますと、GMOインターネット株式会社は「GMOとくとくBBイー・アクセスADSL」と称するインターネット接続サービスを供給しておりました。同社サイトでは「業界最安値!!ADSL」「月額料金1,877円」「今なら6ヶ月無料」などの記載があり、その下部に「キャンペーン期間2015年9月30日(水)まで」とされておりました。しかしその期間が経過した後も6ヶ月無料の表示は継続され、キャンペーン期間も10月31日までと表示が書き換えられました。このように期間経過の度に期間表示の延長を繰り返し、2015年9月1日から約半年間に渡って表示を続けました。消費者庁はこの表示が消費者にあたかもその月内に申し込めば6ヶ月間無料になり、今だけ有利であるとの誤認を生じさせているとして再発防止と周知徹底を命じる措置命令を出しました。
有利誤認表示とは
景表法4条1項2号によりますと、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの・・・よりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」を規制しております。1号の優良誤認表示とは違い商品の性質ではなく、価格や取引条件で他よりも有利であると誤認を招くものが当たります。ここに言う「価格その他の取引条件」とは、価格や料金だけでなく、数量や支払い条件といったものも含まれます。例えば実際には限定はないにもかかわらず、「20名限定!」「今申し込みの方限定」といったものや、実際には他にも費用がかかるにもかかわらず「受講料今だけ1万円ポッキリ!」といった表示が挙げられます。
二重価格表示について
消費者の購買欲を刺激する表示の中でも、その典型例と言えるのが二重価格表示です。二重価格表示とは販売価格とは別に比較すべき参考価格を同時に表示するものを言います。たとえば「通常価格20,000円のところを税込み9,800円」といった表示です。二重表示価格については消費者庁も特に重視している類型と言えます。参考価格が実際の価格である場合には何ら問題ありません。しかしこれが実際と異なる場合に問題となります。ガイドラインによりますと、参考価格が「最近相当期間にわたって」の価格であれば良く、いつの時期の価格であるかが曖昧であったり、将来予定している価格である場合は問題となります。また実際には設定されていないメーカー希望小売価格として表示した場合や正確に調査していない競争他社の価格も問題になります。
違反事例
消費者庁が実際に措置命令を出した事例をいくつか具体的に示します。①スーパーのチラシで実際の価格に「当店価格」を併記していたが実際には「当店価格」は架空のもの、②おせち料理のネット販売で「通常価格21,000円 割引率50%OFF 割引額10,500円」と表示していたが「通常価格」は架空のもの、③スキューバダイビングで「今ならライセンスが1万円ポッキリ」と表示し下部に小さく「※別途要レンタル代金」としていたもの、④資格取得講座で期間内の申し込みに1万円割引の旨表示していたが実際にはほぼ全ての期間で割り引いていたもの等が挙げられます。
コメント
本件では、実際にはずっと6ヶ月無料が適用されるにもかかわらず、今だけであるかのように誤認を生じさせたとして有利誤認表示に当たるとされております。有利誤認表示は実際よりも価格等が有利であるように表示をすれば違法となるものですが、具体的にどのような表示が該当するかは意外に判然としないものと言えます。基本的には事実と異なる表示が含まれていれば該当する可能性が高いと言えます。消費者の注目を引き、購買欲を促進するためには魅力のある表示が不可欠です。どのような場合に有利誤認として違法となるかを具体的な処分事例と通して把握しておく必要があると言えます。とくに価格セールを行う場合には上記二重価格規制に配慮して価格の表示を設定し、消費者に不当に有利であると誤解させないよう注意することが重要と言えるでしょう。
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