消費者庁がオール電化業者に業務停止命令、特定商取引法による規制について
2017/03/28 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他
はじめに
消費者庁は17日、オール電化設備の訪問販売の際に勧誘目的不明示等の違反があったとして「キュートーシステム」(福岡市)に対し6ヶ月間の業務停止命令を出していたことがわかりました。顧客宅に目的を告げずに訪問し太陽光発電システム等の勧誘を行ったとのことです。今回は特定商取引法の訪問販売規制について見ていきます。
事件の概要
消費者庁の発表によりますと、キュートーシステム株式会社はオール電化設備(エコキュート、IHクッキングヒーター)、太陽光発電システム、IH用鍋の販売等を行っておりました。同社の営業員は消費者宅を訪問する際に「電気工事の件でご挨拶に回っています」「近くで太陽光工事を行いますので挨拶回りに来ました」等、勧誘目的を告げず、また相手方が「高いから辞める」等断ったにもかかわらず「今だけの特別価格です」などと勧誘を続けていました。さらにIH用鍋の販売に際し、実際にはほとんど差が無いにもかかわらず、従来の鍋と比べて電気代が3分の1になる等の説明を行い、オール電化を導入すると光熱費の節約分だけで15年ローンが支払えるかのように告げておりました。これに対し消費者庁は、6ヶ月間の営業停止および購入した消費者に対し違反事実の通知、違反事実の発生原因の調査と再発防止を命じました。
特商法による訪問販売規制
特商法が適用となる訪問販売とは、「営業所」「代理店」等以外の場所で契約の締結を行う販売方法を言います。消費者宅に訪問して販売勧誘を行う場合が典型例ですが、ホテルや公民館等を借りて行われる展示販売も該当します。施設の性質や販売期間等から事業者の営業所等とは言えない場合に該当性が認められると言えます。また営業所等で行われても路上での呼び止め、電話等による呼び出し等による場合は該当することになります。これらの場所で物品の販売や指定権利の販売を行うと特商法が適用となります(2条1項1号、2号)。「指定権利」とはリゾート会員権、ゴルフ会員権、映画チケット、英会話教室利用権といった政令指定によるものをいいます。
訪問販売業者の義務
(1)明示義務
事業者が訪問販売を行う際には、その勧誘に先立って相手方に対して①販売業者の氏名、名称②売買等の勧誘をする目的である旨③その商品、役務、権利の種類を明示しなくてはなりません(3条)。自分がどこの業者の者であるか、販売勧誘が目的であること、そして何を販売しようとしているかを相手方に予め示さなければならないということです。
(2)再勧誘の禁止
訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って相手方に勧誘を受ける意思があることを確認するように務めなければなりません。そして相手方が契約を締結しない旨の意思表示をした場合は契約締結への勧誘をしてはならないとされております(3条の2、1項、2項)。相手に勧誘を受ける意思があるかの確認自体は努力義務となっておりますが、ひとたび相手方が拒絶の意思を示した場合は、それ以上の勧誘は禁止されます。
(3)書面の交付
事業者は、相手方と契約を締結した際には①商品の種類②価格③支払時期と方法④商品の引渡時期⑤契約解除に関する事項⑥事業者の氏名、住所、電話番号⑦契約担当者氏名⑧契約締結日⑨商品名、製造業者名⑩商品の型式⑪数量⑫瑕疵があった場合の責任事項⑬特約、等を記載した書面を交付しなければなりません(4条、5条)。
(4)禁止行為
事業者は訪問販売に際して以下の行為が禁止されます(6条)。
①勧誘の際に契約の撤回または解除を妨げるために事実と違うことをつげること。
②勧誘の際に契約の撤回または解除を妨げるために故意に事実を告げないこと。
③契約を締結させ、または撤回、解除を妨げるために相手方を威迫して困惑させること。
④目的を告げず誘引することにより公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘を行うこと。
以上の行為が禁止されますが、このいわゆる「不実告示」とは、商品の効能や製造者等、および上記書面の交付で義務付けられている記載事項等について虚偽の内容を告げることを言います。またクーリングオフをさせないために脅すことが禁止されます。④の目的を告げない誘引とはいわゆるキャッチセールスやアポイントメントセールスにより呼び出すことなどのことを言います。
コメント
本件でキュートーシステムはまず勧誘目的であることを告げずに「工事の挨拶回り」などと告げて訪問しておりました。これは3条の目的明示義務違反に当たります。相手方が「高いから辞める」等の意思を告げたにもかかわらず、なおも勧誘を続けた点は再勧誘禁止違反に当たります。IH用鍋を使用すると電気代が3分の1になると告げた点は商品の性能に関する不実告知に当たります。そして「今だけキャンペーン価格になります」等告げたことは役務対価に関する不実告知に当たります。これらの特商法上の禁止行為の中で特に注意が必要なのが再勧誘の禁止です。ガイドラインによりますと「訪問販売お断り」の玄関の張り紙では拒絶の意思表示には当たりませんが、「いりません」「感心ありません」「結構です」などと言われた場合は該当します。「この◯◯はいりません」の場合は、当該その製品を指しますが「◯◯はいりません」を言われた場合はその製品全般を拒絶したものと解釈されます。営業の際にはどうしても説得を継続しがちですが、相手方が拒絶の意思を示した時点で勧誘は続行できません。また常時キャンペーンにもかかわらず今だけという勧誘は広告等に表示した場合、別途景表法違反にも該当します。訪問販売の際には以上の点を十分に留意することが重要と言えるでしょう。
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