「からやま」が「かつよし」を提訴、周知表示混同惹起とは
2017/11/17 コンプライアンス, 不正競争防止法
はじめに
唐揚げ専門店「からやま」は16日までに、「からよし」を運営するすかいらーくに対し、店名や看板が酷似しているとして使用差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てていたことがわかりました。今回は不正競争防止法が規制する周知表示混同惹起行為について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、とんかつチェーン「かつや」を運営するアークランドサービスホールディングスは2014年12月から唐揚げ専門店「からやま」を展開し、現在国内外に28店舗を出店しているとのことです。一方すかいらーくは今年10月から東京都小平市とさいたま市で「からよし」「から好し」の店名で出店を始めました。アークランド側は「当時ほかでは展開されていなかった画期的なもの」「唐揚げ専門の飲食店チェーンとして試行錯誤を繰り返し開発した業態である」とし、すかいらーくの「からよし」について明らかに「からやま」を模倣したものであると主張しており、不正競争防止法に抵触するとして差止を求め提訴したとのことです。
不正競争防止法上の規制
不正競争防止法3条1項によりますと、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、…その侵害の停止又は予防を請求することができる」としています。不正競争を行う者に対し差止請求ができるということです。そして故意または過失により不正競争を行い、それにより営業上の利益を侵害された者は、その損害の賠償を請求することができるとしています(4条)。また各種不正競争行為を行った場合には罰則規定が設けられており、5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科となります(21条2項各号)。
周知表示混同惹起とは
各種不正競争行為のなかで「周知表示混同惹起」というものがあります。2条1項1号によりますと、「他人の商品等表示」として「需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用」するなどして「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」が該当します。すでに消費者間で一定の知名度を得ている商号や商標などの営業上の信用度を他人が模倣して利用すること、いわゆるフリーライドを防止するための規定です。企業の保有するブランドの信用を守る重要な規定と言えます。具体的な要件を以下見ていきます。
成立要件
(1)商品等表示
周知表示混同惹起に該当するためには、まず模倣された外観等が「商品等表示」に該当する必要があります。条文上は氏名、商号、商標、標章、商品の容器、包装その他営業を表示するものと例が挙げられておりますが、商品等の出所を識別するものであればなんでもよいとされております。店舗の外観に関して裁判例は①他の同種店舗と異なる顕著な特徴があり、②当該外観が特定の事業者による継続的・独占的に使用された長さ、営業の態様等に関する宣伝状況等に照らし、需要者において特定の事業者の出所を表示するものとして広く認識されるに至っている場合に認められるとしています(東京地裁平成28年12月19日)。
(2)周知性
次にその商品等表示が需要者の間に広く認識されている必要があります。これは全国的に知れ渡っている必要は無く、一定の地域で知られていれば足りるとされております(東京地裁昭和51年3月31日)。そしてその程度は混同が生じうる程度に、その地域でしられていれば足りると言われております。
(3)類似性
そして、上記需要者に広く認識されている他人の商品等表示について「類似」する表示等を行う必要があります。この類似について判例は「取引の実情のもとにおいて、取引者、需要者が、両者の外観、呼称、または観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断」すべきとしています(最判昭和58年10月7日)。店舗の外観の場合、上記裁判例では、ライン飾りの形状、出窓の形状、壁の模様、屋根の形、窓の位置、店内の席の配置、飾り付けなどから詳細に比較して類似性を判断しております。
(4)混同のおそれ
他人の商品等表示に類似していたとしても、需要者から見てその主体を混同するおそれが無い場合には該当しないことになります。名称や外観が似通っていたとしても、一般に知られている業種、業態が異なる場合など需要者から見ても別の業者であることが一目瞭然である場合です。たとえばラブホテル「ディズニーランド」といった場合には混同は一般的に生じないと言われております。
コメント
本件であーくらんど側はすかいらーくが出店している「からよし」が自社の「からやま」に酷似しているとしています。唐揚げ専門店「からやま」は全国で28店舗、特に関東圏では、からあげに特化した外食店で、他の同種店舗とは異なる特徴を有し、需要者の間で一定の知名度を確保していると考えられます。また店舗看板も毛筆体のひらがなで店名が表示されており、その下に赤地に白の文字でからあげ定食590円と表示されている点も両者で同じであり、需要者から見て、運営者を混同すると認められる可能性はあると考えられます。以上のように店舗の類似性はその地域の需要者を基準として、一般に運営者の混同を来すかで判断されます。また周知性に関しては、自社がどのように宣伝を行ってきたかや販売数量、販売期間などを立証していくことになります。近年外食チェーンに関して同様の訴訟は増加しております。自社のブランドや店舗、販売態様が模倣された場合には、以上のことを念頭に、立証に必要な要素を確認していくことが重要と言えるでしょう。
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