エネルギアに納付命令、景表法と課徴金について
2018/03/27 コンプライアンス, 景品表示法
はじめに
消費者庁は23日、株式会社エネルギア・コミュニケーションズに対し、光回線インターネット接続サービスに関する表示で景表法違反があったとして課徴金納付命令を出した旨発表しました。違反事実は有利誤認表示とのことです。今回は景表法違反とそれに基づく課徴金について見ていきます。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、電気通信事業等を営む事業者である「エネルギア・コミュニケーションズ」は戸建住宅向け光回線インターネット接続サービスを「メガ・エッグ光ネット」と称して消費者に提供しているとのことです。同サービスを同社ウェブサイト上で表示するに際して、平成28年2月1日~平成28年5月20日までに新規加入した場合に最大2年間月額800円割引する旨表示していたところ、実際には同様の割引は平成27年2月1日から平成28年9月30日まで実施されていたとされます。消費者庁はこれに対し、有利誤認表示が該当するとして計530万円の課徴金納付命令を出しました。
景表法による規制
景表法5条各号では事業者が自己の供給する商品・役務について行ってはいけない不当表示が規定されております。まず「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し…不当に顧客を誘引」する行為を優良誤認表示として禁止しております(1号)。また「価格その他の取引条件について、実際のもの…よりも…著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」も有利誤認表示として禁止されます(2号)。そしてそれ以外の不当表示として内閣総理大臣が指定するものも規制の対象となります(3号)。違反した場合には行為の差止や再発防止を命ずる措置命令が出され(7条)、また5条1号、2号違反については課徴金の対象となります(8条)。
課徴金について
不当表示行為のうち、優良誤認表示、有利誤認表示に関しては課徴金納付命令の対象となります。課徴金の額は対象商品または役務の売上額の3%で、対象となる期間は最大3年間となります。不当表示行為があった場合でも、事業者が不当表示であることを知らず、相当の注意を怠った者でないと認められる場合には免除されます。また課徴金額が150万円未満となる場合も同様に免除となります(8条1項但書)。違反行為から5年が経過した場合も課徴金は課されません(12条7項)。そして独禁法上の課徴金制度と同様に景表法にもいわゆるリニエンシー制度があり、事前に申告した場合には50%の減額がなされます(9条)。
返金措置による減額
課徴金は上記リニエンシー制度の他に返金措置の実施による減額制度も存在します(10条)。課徴金の対象となる行為を行った期間に取引を行った一般消費者のうち、申出をした者に対して購入額の3%以上の額を返金した場合、課徴金の額からその合計額が控除されることになります。実施する場合には返金措置計画を作成し消費者庁長官の認定を受け、計画に沿って実施し期限内に報告することになります。返金額が課長金額を超える場合は課徴金は免除となります。
コメント
本件でエネルギアはウェブサイト上で2年間月額800円割引をあたかも表示の期間中に加入した場合に適用されるものであるかのように表示しておりました。しかし実際には表示期間の1年前から実施しており、価格、取引条件について著しく有利であるように誤認を招くものと認定されました。また8条1項但書の相当の注意を怠った者でない場合にも該当しないとされました。それにより売上額に3%を乗じ、1万円以下を切り捨てて合計530万円が課徴金として算定されました。相当の注意を行った者でない場合に該当するかはガイドラインによりますと、事業者の業態や規模、商品または役務の内容、表示内容、行為態様などを勘案し正常な商慣習に照らして必要とされる注意をしていたか否かで判断するとされております。以上のように景表法違反に基づく課徴金制度には各種減免措置が用意されております。消費者庁から注意等がなされた場合には、これらの制度を適宜利用していくことが重要と言えるでしょう。
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