HITOWAケアに措置命令、有料老人ホームに関する不当表示について
2018/07/04 コンプライアンス, 景品表示法
はじめに
消費者庁は3日、有料老人ホームを運営する「HITOWAケアサービス」(東京都港区)に対し、景品表示法に違反するとして措置命令を出していたことがわかりました。パンフレットには終身入所できる旨表示されていたとのことです。今回は景表法が規制する有料老人ホームに関する不当表示について見ていきます。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、HITOWAケアが全国で運営する有料老人ホーム「イリーゼ」のパンフレットには「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」と記載し、寝たきりや要介護度が重い人でも医療機関と連携して対応できる旨が記載され、終身居住できるかのように表示されていたとされます。しかし実際には、契約時に提示される説明書に認知症などにより暴力を振るうなど対応が困難な場合は契約を解除する旨が記載されておりパンフレットの表示とは異なっていたとのことです。
景表法による規制
景表法では不当な表示として優良誤認表示(5条1号)、有利誤認表示(同2号)が規定されておりますが、それ以外でも一般消費者に誤認されるおそれがあるものとして内閣総理大臣が指定する表示規制が存在します(同3号)。①無果汁の清涼飲料水等についての表示、②原産国に関する表示、③消費者信用の融資費用に関する表示、④不動産のおとり公告に関する表示、⑤おとり広告に関する表示、⑥有料老人ホームに関する不当な表示などが挙げられます。これらに該当する場合でも不当表示として措置命令の対象となります(7条)。
有料老人ホームに関する不当表示
(1)設備等に関す表示
公取委告示である有料老人ホームに関する不当な表示ではまず土地や建物、設備についての表示規定があります。土地建物について当該老人ホームの所有でないにもかかわらず、そのことが明瞭に記載されていない場合に不当表示となります(1項)。また施設、設備についても当該老人ホームが設置していない場合、敷地建物内に設置されていない場合、本当は利用するのに別途費用がかかる場合、構造や仕様が一部異なる場合にそのことが明瞭にに記載されていない場合も同様です(2項~4項)。
(2)居室に関する表示
入居者が当初入居した居室から住み替えが必要となる場合があり得るにもかかわらずその旨明瞭に記載されていない場合は不当表示となります(5項1号)。また住み替えについても当初の部屋よりも専有面積が減少する場合、当初の部屋に関する権利が変更または消滅する場合、住み替えによって追加費用が生じる場合、住み替えによって面積の減少その他仕様変更があり、その分の費用調整が行われない場合など、その旨の明瞭が表示がない場合も不当表示となります(同2号~5号)。
(3)終身居住に関する表示
入居者が終身にわたって居住し、または介護サービスの提供を受けられる旨の記載があり、実際には入居者の状況によって終身にわたって居住、サービスの提供を受けられない場合があるにもかかわらずその旨の明瞭な表示がない場合も不当表示となります(6項)。
(4)介護医療サービス等に関する表示
医療機関との協力関係や介護サービスの表示があるものの、その内容が明瞭に記載されていない場合、また介護サービスが外部委託等の第三者によるものであるにもかかわらずその旨の記載がない場合も不当表示となります(7項、8項)。また介護保険法の対象とならない介護サービスの内容・費用が明瞭に記載されていない場合、また職員等の数の表示も明瞭になされていない場合も同様です(9項、10項、11項)。
コメント
本件でHITOWAケアは「終の棲家として暮らせる重介護度の方へのケア」などと記載しておりましたが、実際には例外規定が存在し、認知症による暴力などが伴う場合は解除もあり得るとされておりました。しかしその旨の明瞭な記載がなされず本件告示6項違反となったとされております。以上のように景表法は不当表示として優良誤認、有利誤認以外でも内閣総理大臣等による告示として各種不当表示を定めており、その存在を認識されていない場合も多々あると言えます。内閣府の調査では昨年度の人口あたりの65歳以上の高齢化率は27.3%とされ、今後も増加していくことが予想されます。有料老人介護施設に参入を検討している場合には各種行政法規だけでなく、今回のような景表法および告示による規制にも留意して準備していくことが重要と言えるでしょう。
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