公取委が指針公表、課徴金減免制度と秘密保護について
2020/04/13 コンプライアンス, 独占禁止法
はじめに
公正取引委員会は2日、改正独禁法の課徴金減免制度に関する指針案を公表しました。今後約1ヶ月の間パブリックコメントを募集し、今年秋頃の施行を目指すとのことです。今回は新しい課徴金減免制度と秘密保護について見ていきます。
調査協力減算制度
昨年6月に公布された改正独禁法ではこれまでの硬直的な課徴金減免制度をより柔軟に改めた調査協力減算制度が導入されております。これまでの公取委への自発的な通報の順位のみによる減免ではなく、公取委への調査協力の度合いによってさらに減算率が加算されるというものです。これにより事業者の公取委に対する調査協力へのインセンティブを高め、効率的な真相解明を図るというものです。以下具体的な減算率と見ていきます。
調査協力による減算率
(1)調査開始前
新しい課徴金減免制度ではまず調査開始前と開始後に分けられることとなります。調査開始前ではまず減免申請の順位によって基本となる減免率が適用されます。1位は全額免除、2位が20%、3位~5位が10%、6位以下は5%となっております。2位以下は従来の減免率よりも低い数値となっておりますが、公取委の調査のどの程度貢献したかによって最大40%加算されることとなります。貢献の度合いによっては6位以下でも最大45%の減免を受けることができるということです。なお1位の事業者は既に全額免除となっていることから貢献度による加算はされませんが、適切に調査協力をしない場合は減免を受けることができないとされます。
(2)調査開始後
公取委の調査開始後は最大3社までが10%、それ以下の順位の事業者は5%の減免となり、そこに調査貢献度によって最大20%が加算されることとなります。調査開始後であっても真摯に協力した場合には最大で30%の減免を受けることが可能となります。
貢献度の評価
公取委のガイドラインによりますと、事件の真相解明への貢献度の評価については、事件の真相解明の状況を踏まえつつ、事業者からの報告内容が①具体的かつ詳細であるか、②事件の真相解明に資する事項について網羅的であるか、③その報告によって裏付けられるかといった要素を考慮して判断されるとのことです。なお公取委の審査官が任意に聴取、審尋した内容は評価対象からは除外されるとされます。これらの評価により真相解明に資する程度が高い場合は40%、中程度である場合は20%、低い場合は10%が加算されることとなります。
弁護士との通信の保護
改正独禁法では上記調査協力減算制度の導入に合わせて弁護士と事業者とのやり取りを記録した文書等を調査の対象としない取扱がなされることとなっております。新制度の利用に関して弁護士との相談ニーズが高まることが予想されるためです。弁護士とのやり取りが含まれる通信を「特定通信」と呼び、調査官は内容に接することなく還付されます。今回公取委が発表した指針では、①弁護士への相談文書、②弁護士からの回答文書、③弁護士が行った社内調査に基づく法的意見が記載された報告書、④弁護士が出席する社内会議での法的意見が記載された社内会議メモが特定通信として保護の対象となるとされております。これらの文書は「公取審査規則特定通信」の表示があること、他の物件と明確に区別して保管されていること、内容を知る者が法務部内限定というように限定されていることが求められております。
コメント
今回の公取委が発表した指針案では上記のように弁護士とのやり取りが含まれた文書が特定通信として保護の対象となるとされております。しかし一方で役員の手帳やノート、弁護士が行った役員らのヒアリング記録、社内調査結果などは対象外とされました。新たな課徴金減免制度の利用に向け、積極的に弁護士と相談することが可能となりますが、特定通信として保護されるためには上記のようにその内容と保管方法に制限が設けられます。どのような内容が保護の対象となるのか、どのように保管しなければ保護されないのかを正確に把握し、減免制度利用が必要となる場合に備えておくことが重要と言えるでしょう。
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