キリンとファンケルが共同開発、機能性表示食品について
2020/08/07 広告法務, 消費者取引関連法務, 民法・商法, その他
はじめに
キリンビールとファンケルは共同開発した機能性表示食品「ノンアルコールチューハイ」を発売することがわかりました。糖や脂肪の吸収を抑えるとのことです。今回は機能性表示食品制度について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、キリンとファンケルは2019年に資本業務提携を行い、キリンの「ノンアルコールチューハイ氷零」とファンケルの「カロリミット」の強みを生かし「ノンアルコールチューハイ氷零カロリミットレモン」を開発販売するとのことです。1本(350ml)あたり5gの難消化性デキストリンが含まれており、食事の糖や脂肪の吸収を抑える機能性表示食品とされます。発売は10月13日の予定です。
機能性表示食品とは
市場では様々なサプリメントや栄養補助食品などのいわゆる健康食品が流通しておりますが、国によって制度化されているものは現在「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」となっております。従来は特定保健用食品と栄養機能食品のみでしたが、2015年の食品表示法施行によって機能性表示食品が追加された形となります。特定保健用食品、いわゆるトクホは血糖値や血圧、血中コレステロールを下げる、骨の健康に役立つといった生理的機能に影響を与える食品で消費者庁長官の審査を経て許可が出されます。栄養機能食品は健康維持に必要な栄養素補給を目的としており、各種ビタミンやミネラル等を含有するもので許可や届け出は不要です。そして機能性表示食品はトクホと同様に生理的機能に影響を与える食品ですが消費者庁による審査や許可は不要となっており届け出だけで表示することが可能となります。
機能性表示食品販売の手続き
消費者庁によりますと、機能性表示食品の販売には次の手続きが必要となります。まず①機能性表示食品の対象食品となるかを判断、②安全性の根拠を明確にし、③生産・製造および品質の管理体制の構築、④健康被害の情報収集体制の構築、⑤機能性の根拠を明確にする、⑥包装容器に適切な表示、これらを予め済ませておく必要があります。そして販売開始予定日の60日前までに消費者庁に届け出ます。不備などがなければ届け出番号が交付され消費者庁のウェブサイト等で情報開示されることとなります。
その他の注意点
機能性表示食品は上記の通りトクホと違って消費者庁長官による審査や許可は必要としておりません。そのため表示した機能の科学的根拠の提示や安全性等については企業側に全面的な責任があります。これらに不備があったり健康被害が生じた場合には消費者庁に報告する責任があります。また機能性の評価にあたっては実際に臨床試験を行う他に、研究論文などが登録されているデータベースから根拠となる論文を抽出する方法(研究レビュー)が存在します。その際には肯定的な論文だけでなく否定的なものや不明瞭なものも含め総合的に判断することが求められております。
コメント
機能性表示食品はトクホと同様に保健機能を有する食品に表示することができる制度です。対象となる食品はトクホ、栄養機能食品以外のものでアルコールが含有されないもの、糖質、ナトリウム等の過剰摂取につながるもの以外となります。本件でキリンとファンケルが共同開発した製品は難消化性デキストリンを含有し、糖や脂質の吸収を抑えるものであり、アルコールが含有しないものとされており、要件は満たしていると言えます。そして消費者庁の情報開示によりますと機能性の評価方法は機能性関与成分に関する研究レビューとなっております。以上のように保険機能を有する食品の表示はトクホ以外にも機能性表示食品が存在します。各制度を正確に把握し、自社製品に適切な制度を選択していくことが重要と言えるでしょう。
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