マイナミ空港サービスに課徴金、排除型私的独占とは
2021/02/25 独禁法対応, 独占禁止法, その他
はじめに
公正取引委員会は19日、航空燃料大手「マイナミ空港サービス」(港区)に対し独占禁止法違反で612万円の課徴金納付命令を出していたことがわかりました。新規参入業者を排除していたとのことです。今回は独禁法が規制する排除型私的独占について見直していきます。
事案の概要
公取委の発表によりますと、大阪八尾空港で航空機の給油を行っているマイナミ航空サービスは「エス・ジー・シー佐賀航空」が新規参入してきた際、取引先の航空事業者に対してエス・ジー・シー社と取引しないよう求めていたとされます。同社はエス・ジー・シー社の品質管理に問題があるとして取引先に「燃料を混ぜたら給油は継続できない」などと伝えたり「事故が起きた際に責任を求めない」との文書に署名を求めたりしていたとのことです。同社は八尾空港における唯一の給油業者で「事故時の責任を回避するためのやむを得ない対応だ」としております。
私的独占とは
独禁法2条5項によりますと、事業者が単独で、または他の事業者と結合・通謀し、その他いかなる方法をもってするかを問わず、他の事業者を排除しまたは支配することによって公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限することは私的独占として禁止されております。条文にもあるように「排除型」と「支配型」分けられます。違反に対しては公取委は排除措置命令を出すことができ(7条)、また支配型私的独占の場合には公取委は必ず課徴金納付命令を出すこととなります(7条の9第1項)。以下排除型私的独占について見ていきます。
排除行為
排除型私的独占における排除行為は、他の事業者の事業活動を困難にさせたり、新規参入を困難にさせ市場における競争の制限につながるあらゆる行為が該当することとなります。典型的には独禁法2条9項各号に規定されている「不公正な取引方法」に当たる行為が該当します。具体的には不当廉売や排他的取引、抱合せ、供給拒絶、差別的取り扱いなどです。その中で特に排他的取引に関して公取委のガイドラインでは、取引の相手方に対し、自己の競争者との取引を禁止または制限する等により、競争者の事業活動を困難にさせる場合を言うとされます。その判断にあたっては市場の状況、行為社の市場における地位、競争者の地位、行為の期間、相手方の数、シェア、行為態様などを総合的に考慮すると言われております。
競争の実質的制限
2条5項の「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」とは、市場支配力の形成を言います。当該市場において競争が減少し、特定の事業者がその意思である程度自由に価格や品質、数量その他の条件を左右し、市場を支配できる状態をつくることを言うとされております(東京高裁平成21年5月29日)。その判断にあたっては、行為者の市場におけるシェアや順位、競争の状況、競争者の状況、新規参入の容易さ、新規参入者にとっての商品の代替性、需要者にとっての供給先変更の容易さなどを総合的に考慮するとされております。
コメント
本件で公取委の判断によりますと、マイナミ空港サービスは八尾空港における約250の取引相手に対し、エス・ジー・シー社から給油を受けた場合、自社からは供給できない旨を通知したり、事故が起きた際に自社に責任を求めない旨の署名を求め、応じない場合には抜油を求めた行為が排除行為に当たるとし、八尾空港における航空燃料販売分野という市場における競争を実質的に制限したとしております。以上のように自社が取引している市場において、新規参入業者と取引しないよう取引相手に求める行為は排他条件付取引に当たる可能性があります。そして市場の競争に与える影響の強さによっては私的独占にも該当しうることとなります。自社の市場におけるシェアや地位、影響力などを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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