6月から改訂、コーポレートガバナンス・コードについて
2021/04/08 商事法務, 会社法, その他
はじめに
金融庁と東京証券取引所は31日、上場企業に適用するコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改定案を示しました。気候変動リスクへの対応策開示などが盛り込まれます。今回はコーポレートガバナンス・コード改定案の概要を見ていきます。
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードとは、安倍政権による2014年の成長戦略に盛り込まれ、金融庁と東京証券取引所が2015年3月に取りまとめた企業統治の指針です。日本企業の国際的な評価を高め、海外からの投資を促進する狙いがあったと言われております。コーポレートガバナンス・コードは上場企業に適用され、株主の権利・平等性の確保、株主以外のステークホルダーとの適切な協働、適切な情報開示と透明性の確保、取締役会等の責務などが主な内容となっております。コーポレートガバナンス・コードには法的拘束力は無いものの、実施しない場合は説明が求められております。コーポレートガバナンス・コードの他にスチュワードシップ・コードというものも存在します。これは主に金融機関などの機関投資家を対象として金融庁が公表している原則で、「モノ言う大株主」として企業をチェックすることが期待されているとされます。
2018年改訂
2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コードは3年が経過した2018年には上場会社の9割以上が独立社外取締役を設置するなど一定の効果を発揮してきたとされます。しかし一方で投資家と企業との対話や経営陣の果敢な判断が促進されているかについては疑問の声も上げられておりました。そこで2018年3月に改訂がなされております。大まかな改訂内容は、経営環境の変化に対応した経営判断と投資戦略、CEOの選解任、経営者の報酬決定、独立した諮問委員会の活用、独立社外取締役の活用と取締役会の多様性、政策保有株式などが挙げられます。これまで不透明とされてきた取締役会における経営のトップの選任や役員報酬の決定に客観性や透明性のある手続きが求められております。
2021年改訂の経緯
新型コロナウイルスの影響による企業環境の変化の中で、新たな持続的成長と中長期的な企業価値の向上の実現に向けて取締役会の機能発揮や人材の多様性の確保、サステナビリティをめぐる課題への取り組みが求められております。また2022年4月から適用となる東京証券取引所の新市場区分においても、国際的に魅力のある市場となることが求められます。また主要国の金融当局で構成される金融安定理事会(FSB)が設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言により気候変動に関する情報開示も求められております。こうした中、金融庁と東京証券取引所の有識者会議は以下のような改定案を公表しました。
2021年改訂の概要
今回の改訂案では大きく、取締役会の機能発揮、中核人材の多様性、サステナビリティ、その他が挙げられます。取締役会の機能発揮では、取締役会におけるより高度なガバナンスが求められ、独立社外取締役が取締役会の3分の1以上、必要に応じて過半数が要求されます。指名委員会・報酬委員会を任意機関とし、独立社外取締役を主体とした機能強化も要請されます。中核人材の多様性では、女性や外国人、中途採用者の管理職登用、人材育成方針や実施状況の開示などが求められます。そして今回大きく取り入れられたのがサステナビリティに関する項目です。取締役会におけるサステナビリティに関する議論、方針決定や情報開示、気候変動によるリスク等についてのTCFD枠組みに基づいたデータ収集と分析およびその開示などが求められます。それ以外にも投資家にとって必要と企業が考える情報について英語での発信などが挙げられます。
コメント
上場企業に適用されるコーポレートガバナンス・コードは2018年改訂に続いて今回も大きく改訂されました。以前から言われていた取締役会の機能強化とガバナンス強化に加え、一番目立った追加点が気候変動リスクとサステナビリティに関してです。主要国で組織されたTCFDをはじめ国際社会では気温上昇などの気候変動によるリスクに対する関心が高まっております。英国でもすでに気候変動に関する情報開示が義務付けられたと言われており、今後日本でも多くの企業で対応が必要になってくるものと予想されます。また現在のコロナ禍によって経営環境の見通しが立ちにくい中、経営陣や管理職への多様な人材の登用や、より多くの社外取締役の設置なども要求されております。コーポレートガバナンス・コードが直接適用される上場企業だけでなく、これから上場を目指す企業や、非上場企業もこれら国際社会での潮流を把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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