マックスバリュ西日本とスーパーのフジが統合へ、株式交換と株式交付について
2021/12/15 商事法務, 総会対応, M&A, 会社法
はじめに
経営統合を発表しているフジ(松山市)とマックスバリュ西日本は6日、予定している株式交換の比率を1対1にする旨発表しました。両社はイオンの連結子会社となる予定とのことです。今回は株式交換と株式交付制度について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、中国・四国地方でスーパーを展開するフジ(松山市)とマックスバリュ西日本は経営統合し、イオンの連結子会社となる旨の合意9月1日に行っていたとされます。フジの発表では、まずフジを完全親会社、マックスバリュ西日本を完全子会社とする株式交換を行い、その後フジは持株会社となる機能以外を分割してフジ・リテイリングに承継させる予定とのことです。これにより中国・四国地方の人口減少と新型コロナによる消費者のライフスタイルの変化に対応した地域密着型経営を深化させていくとされます。来年1月31日にマックスバリュ西日本で株式交換契約の承認のための臨時株主総会が開催される予定です。
株式交換とは
株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の会社に取得させ、それにより完全親子会社化することを目的とする組織再編行為の一種です(会社法2条31号)。株式交換完全親会社となれるのは株式会社と合同会社に限られ、また子会社側は株式会社に限られます。株式交換は株主全員の同意を得ることなく、株主総会の特別決議によって全株式を親会社に移転させることができます(309条2項12号)。また子会社となる会社の株主に交付する対価も金銭に限られず、親会社となる会社の株式を交付することができ財産的負担も小さいというメリットがあります(768条1項2号)。また合併などと異なり、会社内の従業員や事業などはある程度独立性を保ったまた経営統合ができると言えます。
株式交換の手続き
株式交換の手続きは、まず当事会社で株式交換契約を締結し、取締役会の承認決議を経て、事前開示書面を備え置きます(782条1項)。両社で株主総会特別決議による承認決議を要しますが、相手会社が特別支配会社である場合は省略することができます(784条1項ただし書)。また親会社が交付する対価が純資産額の20%以下である場合も親会社側で承認決議を省略できます(簡易株式交換、796条2項)。株式交換は当事会社の株主が入れ替わるだけであることから原則として債権者異議手続きは不要です。例外的に子会社側の新株予約権付社債を承継する場合、または親会社が交付する対価の5%以上が株式以外の場合に必要になります(799条1項3号)。株券発行会社は株券提出公告を行い、これらの期間終了後の効力発生日に完全親子会社化が成立します。その後事後開示書面を備え置き、登記を行うこととなります。
株式交付制度とは
株式交換制度は完全親子会社(100%親子会社)化を目的とする制度ですが、単に親子会社(50%超)化を目的とする組織再編行為として今年3月に導入されたのが株式交付制度です(2条32号の2)。株式交換と異なり子会社側は当事会社とならず、親会社側で計画を作成し、事前開示と株主総会の承認決議、債権者異議手続を経て、子会社側の株主から譲渡申込みにより譲り受けます。株式交換は強制的に全株式を移転させますが、株式交付は株主からの申込みを受けて取得することとなります。この制度は株式会社のみが利用することができ、また親子会社化することを目的とすることから、すでに親子会社となっている場合に持株比率増加を目的として利用することはできません。あくまでも簡易・小規模な組織再編と言えます。
コメント
本件で経営統合を予定しているマックスバリュ西日本はイオンがその株式の74.1%を保有している子会社です。そのため同社とフジは特別支配会社関係はなく、株式交換に際して通常の株主総会決議による承認が必要となります。両社の株式交換後に分割して持株会社となるフジの株式もイオンが51.1%を取得して子会社化しグループ化する予定とされます。以上のように近年のM&Aでは株式交換や会社分割、吸収合併など様々な制度が複合的に利用されております。上で紹介したように今年からはより簡易な株式交付制度も導入されており、既に数社が利用していると言われております。近年の地域の過疎化や新型コロナ、コストの高騰化など組織再編の必要性が上昇傾向にあります。どのような手法があるかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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