「食べログ被害者の会」発足、口コミサイトの独禁法上の問題について
2022/04/15 コンプライアンス, 独占禁止法
はじめに
飲食店口コミサイト「食べログ」に不当に点数を下げられたとして、焼肉チェーン店運営会社が「食べログ被害者の会」を発足させていたことがわかりました。同社とは現在すでに訴訟が係属中とのことです。今回は口コミサイトでの評価と独禁法上の問題について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、焼肉チェーン「KollaBo」を運営する株式会社韓流村は今月4日、株式会社カカクコムが運営するグルメサイト「食べログ」がチェーン店の点数を不当に下げているとして「食べログ被害者の会」を発足させ、集団で法的措置を取ることを呼びかけているとされます。食べログでは2019年5月21日から点数をつけるアルゴリズムを変更し、チェーン店は一般的な飲食店に比べ低い点数になりやすくなっているとのことです。これにより食べログ経由の予約が7割減少し、全体の売上も3割減少したとして損害賠償などを求め提訴に踏み切ったとされます。またこの問題に関しては2020年に公取委が調査報告書を発表しております。
口コミサイトと独禁法
日本には現在、食べログだけでなく、「ホットペッパー」や「ぐるなび」など多くの飲食店ポータルサイトが存在します。これらのポータルサイトでは一般消費者の検索に応じて、様々な店舗の情報と口コミ評価などを表示し、ネット予約なども行えるといったサービスを提供しております。飲食店にとってもこれにより多くの消費者の目にとまり、売上の増加が期待できます。一方でこれらポータルサイトはその影響力の強さから、場合によっては独禁法上問題となりうると言われております。店舗によってはこれらポータルサイトでの評価や表示に売上を大きく依存している場合もあり、高額な契約を余儀なくされる例も少なくないと言えます。またポータルサイト側の一方的な契約内容や扱いの変更を受けることもあるとされます。こういった場合、独禁法の優越的地位の濫用に該当する可能性も指摘されております。
優越的地位の濫用
優越的地位の濫用とは、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益をあたえる行為を言い(独禁法2条9項5号)、不公正な取引方法の一種として禁止されております(19条)。優越的地位に該当するかについて公取委のガイドラインでは、相手方が自己との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、著しく不利益な要請等を行っても受け入れざるを得ないような場合としております。取引依存度や市場における地位、取引先変更の可能性、その他取引の必要性を示す具体的事実が考慮要素とされております。そして濫用行為とは、相手方への購入・利用強制、利益提供の要請、取引商品等の受領拒否、返品、支払い遅延、減額などが挙げられますが、それ以外の行為も該当することとなります。
飲食店ポータルサイトと優越的地位の濫用
公取委の調査報告では、飲食店にとってこれらポータルサイトとの取引継続が困難になれば事業経営上、大きな支障を来すため、著しく不利益な要請等を行っても受け入れざるを得ない場合も有り得、優越的地位にあるポータルサイトが存在する可能性は高いとされます。そしてこれらポータルサイト加盟店の約11%がサイト側から一方的な契約内容の変更を受けたとされ、そのうちの約69%がそれによって不利益を受けたと回答しているとされます。またポータルサイトの2018年度の新規加盟店の約18%が営業代理店経由であるとされ、これら営業代理店に対しても一方的に達成が厳しいと考えられるノルマを設定して、未達成の場合には手数料を減額するなどした場合には優越的地位の濫用に該当する可能性があるとされております。そしてポータルサイト側が、合理的な理由なく、恣意的にルール(アルゴリズム)の設定・運用等で特定の飲食店の表示順位を落としたり、他店と異なる取り扱いをする場合は差別的取扱や優越的地位の濫用となるおそれがあるとしております。
コメント
本件で「食べログ被害者の会」側の主張によりますと、食べログのアルゴリズムの改定によってチェーン店は低めの点数で表示されるため、ユーザーの目に留まりやすい上位に表示されるように有料会員にならざるを得ないとしております。契約を多く獲得するためにあえてチェーン店を低く表示されるよう表示ルールを変更しているのであれば上記のように優越的地位の濫用に該当する可能性もあり、今後はそれらの点が争点となってくるものと予想されます。以上のようにインターネット上のポータルサイトも昨今の一般消費者の利用の多さからその影響力は相当大きなものとなっております。そのため、それを利用せざるを得ない事業者にとっては優越的地位となる可能性も示唆されております。ポータルサイト側もそれを利用する側も今一度これらの点を再確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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