ジー・スリーホールディングスに有価証券報告書等の虚偽記載で課徴金納付命令勧告
2022/05/19 金融法務, コンプライアンス, 金融商品取引法
はじめに
証券取引等監視委員会は、2022年4月26日、株式会社ジー・スリーホールディングスが行った有価証券報告書等の虚偽記載に関し、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、4605万円の課徴金納付命令(金融庁設置法第20条第1項)発出の勧告を行いました。これに対し、ジー・スリーホールディングスは同勧告について新たな情報を公表しています。同社は、2022年2月18日に、過年度の有価証券報告書及び四半期報告書について虚偽記載との指摘を受けたことに関し訂正報告書を提出たと発表していましたが、これを受けて今回の勧告が行われた形になります。本記事では、課徴金納付命令勧告までの一連の流れを追っていきます。
■金融庁設置法第20条第1項
|
事案の概要
ジー・スリーホールディングスは資本金10億円以上の巨大企業であり、株式会社エコ・テクノサービス、株式会社ジー・スリーファクトリーをグループ会社に持っています。証券取引等監視委員会からは、以下の法令違反の事実が指摘されています。
1.継続開示書類への虚偽記載
ジー・スリーホールディングスが平成29年7月から令和2年1月にかけて関東財務局長に対し提出した有価証券報告書および四半期四半期報告書につき、売上の前倒し計上及び売上の架空計上等の不適正な会計処理が反映されており、金融商品取引法第172 条の4第1項および第2項に規定する「重要な事項につき虚偽の記載」が認められたとのことです。
2.記載すべき重要な事項の記載が欠けた有価証券報告書の提出
ジー・スリーホールディングスは同社の実質的な主要株主であり役員に準ずる者が議決権の過半数を所有している会社との取引を、「関連当事者との取引(“連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則”第15条の4の2第1項)」として処理し、連結財務諸表への注記を行わなかったそうです。その結果、令和2年11月に、「記載すべき重要な事項の記載が欠けている(金融商品取引法第172条の4第1項)」有価証券報告書を関東財務局長に対し提出したとされています。
3.「重要な事項につき虚偽の記載」がある有価証券届出書(株券の募集)の提出
ジー・スリーホールディングスは、1.の虚偽記載のある有価証券報告書(令和元年8月期)および四半期報告書(令和元年11月第1四半期)を組込情報とする有価証券届出書(株券の募集)を関東財務局長に対し提出し、これが「重要な事項につき虚偽の記載(金融商品取引法第172条の2第1項)」のある有価証券届出書の提出を構成したとされています。
ジー・スリーホールディングスの今後の対応
ジー・スリーホールディングスは公表した資料の中で、証券取引等監視委員会から勧告が行われたことを真摯に受け止めること、金融庁から正式な通知を受領次第速やかに必要な措置を講じること、その内容についてお知らせすることを明記しています。なお、同社は2022年8月期第1四半期に不適切な会計に係る費用として500百万円をすでに特別損失として計上済です。
コメント
今回の証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告は、金融庁設置法第20条第1項に基づく措置であり、今後、金融庁からの正式な通知が待たれます。有価証券報告書等の重要書類の誤りは株主を含む多くのステークホルダーの信頼を損なう恐れがある重大なミスです。企業には不適切な会計処理を防ぐためのガバナンス強化が求められています。
新着情報
- 業務効率化
- Legaledge公式資料ダウンロード
- ニュース
- NTTが社名変更へ、NTT法とは2025.1.8
- NEW
- NTTは正式社名の「日本電信電話」を変更する方針を固めていたことがわかりました。新社名は春まで...
- セミナー
- 茂木 翔 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】2024年Web3重要法令改正等の確認
- 終了
- 2024/12/06
- 12:00~13:00
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 加藤 賢弁護士
- 【無料】上場企業・IPO準備企業の会社法務部門・総務部門・経理部門の担当者が知っておきたい金融商品取引法の開示規制の基礎
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 大谷 拓己弁護士
- 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階
- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- 弁護士
- 松田 康隆弁護士
- ロジットパートナーズ法律会計事務所
- 〒141-0031
東京都品川区西五反田1-26-2五反田サンハイツビル2階