厚労相、第12回これからの労働時間制度に関する検討会で「裁量労働制」の調査結果を報告
2022/05/11 労務法務, 労働法全般
はじめに
2022年4月26日、厚生労働省は第12回「これからの労働時間制度に関する検討会」を開催し、同日、検討会の内容や資料をホームページ上で公開しました。今回の検討会では裁量労働制に関する現状や課題に関して議論がなされ、制度に関する実態調査の結果も公表されています。そこで今回は、本検討会の内容を詳しく見ていきましょう。
裁量労働制とは
裁量労働制は「みなし労働時間制」の一種です。実際の労働時間の長短に関係なく、契約で定めた一定の時間を働いたと見なし、その分の対価を支払う労働制度です。厚生労働省によれば、裁量労働制は「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類に分けることができます。研究開発、出版事業の取材、公認会計士、弁護士、証券アナリストなど19業種が専門業務型裁量労働制に分類され、「自ら主体的に事業の運営に関する業務を行う労働者」などが企画業務型裁量労働制に分類されます。
現行の裁量労働制について
今回の資料「現行の裁量労働制について②」では、最初に2種類の裁量労働制に関する比較がなされた後、裁量労働制と他の労働時間制度の比較、参照条文の確認が行われています。例えば、対象業務に関しては、専門業務型裁量労働制は「業務の性質上大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務」、企画業務型裁量労働制が「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」である一方で、類似する高度プロフェッショナル制度では「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるもの」とされており、業務内容にも違いが見られます。
裁量労働制実態調査の結果について
資料「裁量労働制実態調査の結果について」では、対象業務及び対象労働者関係、本人同意関係についてそれぞれ実態調査の結果が公表されています。裁量労働制に対する意見としては、適用事業場・専門型で37.9%、適用事業場・企画型で33.9%が現行制度のままで良いと回答したのに対して、それぞれ15.8%、39.7%が制度を見直すべきと回答しています。見直しの提案の中で多かった回答は「対象労働者の範囲を見直すべき」でそれぞれ6割以上の回答が得られています。また、企画型では「手続き負担を見直すべき」という回答が76.5%と最も多くなっており、今後の手続きの改善が求められます。最後に事業場における労働者の同意要件について調査結果が報告されており、専門型では46.3%が本人の同意を制度適用の要件としていることが明らかになっています。一方で、企画型では本人同意を要件としている割合は97.2%と高い割合になっており、両者の間で運用に違いが見られます。なお、本人同意の手続きは専門型で62.5%、企画型で55.4%が「書面で行う」と回答しており、次いで「メールなどの電磁的方法」、「口頭によるもの」と続いています。
コメント
今回の裁量労働制に関する報告では、制度の実態や事業場の疑問、改善してほしい点について確認することができます。本制度はまだまだ発展途上の制度であり、調査結果を見ると特に適用する労働者の範囲や同意について戸惑いがあることが明らかになりました。また、企業が裁量労働制を導入する際に、他の企業の実態を知り参考にする上でも有益な情報です。今回の事業場からのフィードバックをもとに、手続きの簡略化や適用範囲の見直しなど制度改善が行われることが期待されます。
【関連リンク】
厚生労働省|これからの労働時間制度に関する検討会第12回資料
厚生労働省|専門業務型裁量労働制
厚生労働省|企画業務型裁量労働制
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