経済産業省、「電子商取引に関する市場調査の結果」を発表
2022/09/05 IT法務, コンプライアンス, 特定商取引法
はじめに
2022年8月12日、経済産業省が、日本の電子商取引市場に関する調査結果を発表しました。本調査は、日本国内のBtoC-EC(企業と消費者の取引)、BtoB-EC(企業同士の取引)、CtoC-EC(消費者同士の取引)の市場に加え、越境EC消費者向けの市場の動向などを調査するもので、平成10年から毎年実施されております。本記事では、経済産業省が発表した調査結果の概要についてご紹介します。
現状の電子商取引市場について
令和3年にBtoC-ECの市場規模は、20.7兆円となり、大きく拡大しています。前年比でも7.35%増となっており、令和2年が19.3兆円、令和3年が19.4兆円と、やや足踏みしていたことを考えると、令和3年に大きな伸びを見せた格好です。企業間取引であるBtoB-ECも令和3年の時点で372.7兆円となり前年比11.3%に増えています。
物販系BtoC-ECにおける状況
上述のように大きな伸びを見せている物販系BtoC-EC市場の中にあっても、上位4カテゴリーの伸びが顕著です。
「食品、飲料、酒類」(2兆5,199億円)
「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」(2兆4,584億円)
「衣類・服装雑貨等」(2兆4,279億円)
「生活雑貨、家具、インテリア」(2兆2,752億円)
これらのカテゴリーの市場規模が、いずれも2兆円を超えていること、上位4カテゴリーだけで物販系BtoC-EC市場規模の73%を占めていることがわかると思います。新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛が呼びかけられた令和2年を経て、令和3年に入ると徐々に消費者の外出の機会が増えましたが、それまでの期間にEC利用が定着したことで、物販系BtoC-EC市場は今でも拡大傾向にあります。
なお、EC化率(BtoCの商取引市場規模を分母、BtoC-EC の市場規模を分子とする)という観点で、最も高いのは「書籍・映像・音楽ソフト」の34.18%で、次いで、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器」などの32.75%となっています。以前であれば、直接店舗に足を運んでいた消費者が、ECを通じて商品を購入するようになったことが見て取れる数字です。
サービス系BtoC-ECにおける状況
上述した物販系と共にBtoC-ECを牽引しているサービス系においては、「旅行サービス」(1兆4,003億円)が最も大きな市場となっています。もっとも、新型コロナウイルスの流行の余波を受けて、その規模は急速に縮小しています(令和元年比64%減)。
一方、「チケットの販売」分野は、同じく新型コロナウイルスの流行に伴い各種イベントが中止となった影響で、令和2年には前年比66%減と、こちらも大幅な縮小を見せていましたが、イベントを再開する機運の高まりから、令和3年には前年比67%増と、回復傾向を見せています。
デジタル系BtoC-ECにおける状況
デジタル系分野においては、「オンラインゲーム」(1兆6,127億円)の市場が最も大きい結果となっています。その他にも、「有料動画配信」、「電子出版(電子書籍・電子雑誌)」などの分野の市場規模も拡大中で、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要の伸びを感じさせます。
コメント
電子商取引市場に関しての今の状況をメインに解説しました。コロナの影響によって、EC市場が大きく躍進していること、分野によっても伸び率に違いがあることもわかります。現状、物販が最も強い状況ですが、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてくれば、旅行サービスに代表されるサービス系なども盛り返してくると予想されます。また、消費者同士の取引であるCtoC-ECも急激に拡大し、2021年には2兆2,121億円にまで規模を拡大しています。伸び率も12.90%になり、インドアで使えるエンタメやホビーなどの購入が増加したと言われています。
外出自粛や巣ごもり需要など自宅で過ごすようになったからこそ伸びたジャンルなども含め、今後コロナが落ち着いたときにどう変化するのか?電子商取引市場にとっても転換の時といえるのではないでしょうか。
法務の観点では、今後、自社が様々な事業分野でEC市場に進出する可能性が高まります。その場合、利用者の個人情報の管理に始まり、本人確認・年齢確認の問題、通信販売に必要な許認可管理、特定商取引法・消費者契約法対応、インターネット広告関連やポイントサービス周りの景品表示法対応など、法務がカバーすべきエリアは多岐に及ぶことになります。自社のEC進出の動向に敏感にアンテナを張り、準備を行うことが重要になりそうです。
【関連リンク】
令和3年度 電子商取引に関する市場調査 報告書
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