東京労働局、介護施設での労働災害増加を受け「TOKYO介護施設+Safe協議会」を設置
2022/09/16 労務法務, 労働法全般
はじめに
東京労働局は8月23日、「TOKYO介護施設+Safe協議会」を設立しました。同協議会は、社会福祉施設での労働災害予防を目的としたもので、都内の介護事業会社4社と社会福祉法人、東京都福祉保健局などを構成員としています。
近年、介護事業をはじめ、小売業や金融・保険業、運輸・郵便業等に代表される第三次産業における労働災害の増加が問題となっています。それを受け、厚生労働省は、今年6月、「従業員の幸せのための安全アクションSAFEコンソーシアム」を立ち上げています。労働災害問題の解決に賛同した企業・団体で共同事業体を形成し、労働災害問題の協議や、加盟者間の取組の共有、マッチング等を行うものです。それに加えて、各都道府県労働局に「+safe協議会」を設置し、リーディングカンパニー、地方公共団体、関係団体等を構成員とし、労働災害の予防を目指すとしていました。今回、東京労働局が設立した「TOKYO介護施設+Safe協議会」も、当該取り組みの一貫となります。
本記事では、労働災害の現状と、今回の東京労働局の取り組みについて解説して行きます。
社会福祉施設での労働災害の現状
社会福祉施設での労働災害については、令和2年の死傷者数が平成29年比で33.5%増の1万4119人にのぼり、令和2年の年千人率(1年間の労働者1,000人当たりに発生した死傷者数の割合)は平成29年比で25.3%増の3.29であり、近年の増加傾向が顕著です。また、労働災害の内容に目を向けると、動作の反動・無理な動作による腰痛等が全体の約40%を占め、転倒によるものが33%を占めます。
政府は、このような労働災害を防止するために、従事者の人材不足、利用者の災害、働き方の質を改善するよう提唱しています。これらの弊害は、社会福祉施設の経営上の問題とも位置付けられ、人材が不足すれば働き方の質も下がり利用者の災害も空きやすくなる等、相互に関連しあう事柄です。これらの弊害に対処すべく、人材不足に関しては、介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進、介護職の魅力向上、利用者の災害に関しては、利用者が起因となる事故の防止、働き方の質に関しては、生産性を向上するよう取り組むようです。
予防策
これまでも都道府県労働局及び労働基準監督署による本社等の指導、安全で安心な施設・事業場づくり推進運動が行われてきましたが、労働局主導とし+safeコンソーシアムに加盟する団体が連携し、表彰や広報活動の実施を通じて、目標達成のための国民運動を推進していきます。
管内のトップ企業は、+safe協議会に参加し、情報交換や広報活動等の取組を実施します。複数店舗を経営する中規模程度の企業は、+safe育成支援に参加し、都道府県労働局が個別に企業の課題発掘・取組実施を支援します。そして、上位に位置する+safe協議会への追加を目指します。
政府は、加盟団体を公募により集めます。具体的には、行政機関・研究機関・労働災害の減少に取り組む企業や団体から募集します。加盟団体が連携して安全で健康に働くことのできる職場づくりに向けた各種プロジェクトを実施する予定です。
コメント
今回、東京労働局がフォーカスしたのは介護事業でしたが、近年、第三次産業全般において労働災害の増加が問題視されています。従来、第一次産業・第二次産業に多いイメージのあった労働災害ですが、現在は第三次産業における労働災害の割合が全産業の4割近くに上っています。また、発生頻度の面でも、第三次産業におけるほとんどの業種が全産業平均を上回っており、業種を問わず、労働災害に対し自分事と捉え対策する必要があります。
上述した「従業員の幸せのための安全アクションSAFEコンソーシアム」は、加盟が無料で、
(1)ロゴマークの使用やアワードによる労働安全衛生への取組のPR
(2)加盟メンバー間での取組事例の共有による企業内等での労働安全衛生水準の向上、労働災害損失の減少
(3)加盟メンバー間の労災防止・健康増進事業連携マッチング
などが期待できるといいます。一度、社内で加入の要否を検討してもよいかもしれません。
【関連リンク】
従業員の幸せのための安全アクションSAFEコンソーシアム ポータルサイト
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