厚生労働省、「令和4年版/過労死等防止対策白書」を公表
2022/10/27 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般
はじめに
政府は、10月21日、過労死等防止対策推進法に基づき、「令和3年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(令和4年版 過労死等防止対策白書)を閣議決定しました。
「過労死等防止対策白書」は、過労死等防止対策推進法の第6条に基づき、政府が国会に毎年報告を行う年次報告書です。今回の白書においては、新しい働き方であるテレワークや新型コロナウイルス感染症の影響についての調査分析に着目している点が、例年のそれと異なります。本記事では、令和4年版「過労死等防止対策白書」のポイントをご紹介します。
労働時間の状況
【注目したい数字】
(1)この数年、日本における労働者1人当たりの年間総実労働時間は微減傾向。しかし、令和3年は、前年を上回り、前年比12時間の増加。
(2)令和3年の一般労働者の総実労働時間は 1,945 時間なのに対し、パートタイム労働者の総実労働時間は946 時間と半分以下。労働者中、「パートタイム労働者」の割合は、増加傾向が継続。
(3)労働者1人当たりの年間総実労働時間の中長期的な減少は、パートタイム労働者の割合の増加の寄与もあると推測。
(4)「建設業」、「運輸業,郵便業」、「情報通信業」、「製造業」が全産業平均よりも労働時間が長い。
(5)「月末1週間の就業時間が40 時間以上である雇用者(いわゆるフルタイム労働者)のうち、その就業時間が 60 時間以上である者」の割合は、平成23年以降、緩やかに減少しており、令和3年は 8.8%と2年連続で 10%を下回った。 ※大綱上の目標は令和7年までに5%以下。
(6)年次有給休暇の取得率は平成26年の47.6%から増加傾向が続き、令和2年は56.6%。 ※大綱上の目標は令和7年までに70%以上。
(7)「民間企業の雇用者」に新型コロナウイルス感染症に関連した自身の雇用(勤務日数・労働時間等)や収入にかかわる影響の有無を尋ねたところ、影響があった旨回答した群が33.3%と、令和2年5月の44.9%から大きく減少した。
メンタルヘルス対策等の状況
【注目したい数字】
(1)仕事やキャリアに関する強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者の割合は、令和3年は53.3%。依然として半数を超えている。
(2)メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は、令和3年は59.2%。平成23年の43.6%から始まり、平成25年に60.7%に達した後は、毎年、60%前後を推移。 ※大綱上の目標は令和4年までに80%以上。
(3)職場のハラスメントに関し、全国の総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が相談内容別で10年連続最多を記録。同コーナーに寄せられた個別労働紛争に係る相談352,914 件のうち、約24.4%を占める86,034 件が「いじめ・嫌がらせ」の相談。
自殺の状況
【注目したい数字】
(1)仕事を原因・動機の1つとする自殺者の数は、近年、ほぼ横ばい傾向。令和3年は 1,935 人と前年比 17 人の増加。
(2)仕事を原因・動機の1つとする自殺者数の原因・動機の詳細は、令和3年においては、「仕事疲れ」(28.3%)、「職場の人間関係」(24.6%)、「仕事の失敗」(17.0%)、「職場環境の変化」(14.0%)の順。
(3)精神障害の出来事別労災決定及び労災支給決定件数では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」125 件、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」71 件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」66 件の順に多くなっている。
テレワークの状況
【注目したい数字】
(1)業種別のテレワークの導入割合に目を向けると、「情報通信業」 82.4%、「学術研究、専門・技術サービス業」 62.7%、「金融業、保険業」 55.6%の順。
(2)事業規模別に見ると、「1,000 人以上」で61.0%、「300~999人」で45.1%。「1~9人」は20%と、事業規模別の差異が激しい。
(3)毎日テレワークを実施しているのが男性16.1%、女性16.8%。週4日程度実施しているのが男性9.9%、女性10.4%。4人に1人は、週4日以上のテレワーク。
(4)テレワークの頻度が高くなるにつれ、睡眠時間が6時間未満の者の割合は減少する傾向
(5)テレワークの実施頻度別に主観的幸福感をみると、男女とも、実施頻度が高い層は実施頻度が低い層よりも主観的幸福感が高い。
コメント
今回、発表された「過労死等防止対策白書」では、過労死の発生原因・対策等に関するデータが細かく紹介されています。上述したように、仕事やキャリアに関する強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者の割合が半数を超えている現状に鑑みると、どの企業にとっても、過労死等への対策は他人事ではありません。
大事な同僚を守るうえでも、将来的な労務紛争の予防という観点でも、何が過労死等防止のキーファクターになるのか、下記白書に目を通してみるとよいかもしれません。
【関連リンク】令和4年版過労死等防止対策白書(本文)
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