ゴーゴーカレーが金沢に移転、本店移転の手続とメリットデメリット
2023/02/07 商事法務, 会社法
はじめに
北陸や首都圏を中心に「ゴーゴーカレー」を展開するゴーゴーカレーグループが本社を東京から金沢に移転していたことがわかりました。名実ともに地元企業になったとのことです。今回は首都圏から地方への本社移転について見ていきます。
事案の概要
北國新聞の報道によりますと、ゴーゴーカレーグループは先月27日までに、東京都千代田区有楽町に置いていた本社を金沢市に移転させたとされます。同社は2003年に創業、翌04年5月、新宿にゴーゴーカレー1号店を開店し、05年5月に金沢本店をオープンしたとのことです。創業者の宮森宏和社長の出身地である金沢を本拠地として事業を展開し、「金沢カレー」をうたっていることから同社の本社も金沢にあると思われることが多かったとされ、今後は名実ともに金沢の企業として活動するとしております。東京都内の拠点もサポートセンターとして残すとされます。
本店移転の手続き
会社法27条では定款の絶対的記載事項が規定されており、商号や目的と並んで本店の所在地もそれに含まれております。そのため定款の記載の仕方によっては本店移転の際に定款変更を要し、株主総会の特別決議を経る必要がある場合があります。たとえば定款に「当会社の本店は、東京都渋谷区に置く」と記載されており、渋谷区神宮前から渋谷区桜丘町に移転する場合は定款変更は要せず取締役会決議または取締役の過半数の一致で行うことができます。これに対し他の区や、大阪市、名古屋市などに移転する場合は定款変更が必要となります。なお本店移転の効力発生日は取締役会決議の後に現実に移転があった日とされております。この現実に移転があった日というのは本店における営業を開始した日を意味すると言われております。
本店移転後の手続き
本店移転がなされた後は各役所等に届出などが必要となります。まず移転後2週間以内に管轄法務局にその旨の登記申請を行う必要があります。ここで法務局の管轄外に移転する際には申請書を2通用意し、それらを元の本店の管轄法務局に提出することとなります。そこでの審査が通れば移転先の管轄法務局に送付してもらえ、そこでも審査が通れば移転先で登記がなされ、元の管轄法務局でも登記がなされます。登録免許税は各登記所3万円ずつで合計6万円となります。申請書には上記の手続で要した株主総会議事録や取締役会議事録、印鑑届出書などを添付します。そして登記以外にも、税務署への異動届出書や給与支払い事務所の移転届、市区町村への届出、年金事務所への所在地変更届、ハローワークへの所在地変更届、郵便局への転居届などが必要となります。
本店移転のメリット・デメリット
首都圏から地方に本店を移転させるメリットとしてまず優遇税制が挙げられます。第二次安倍政権の地方創生政策で、過剰な人口の首都圏流入を抑え、地方の活性化を図ることを目的としております。これには地方に本社機能を新設・増設する場合に建物等の取得価格に応じて減税がなされるオフィス減税と、地方で新しく従業員を雇い入れる場合その人数に応じて減税を受けられる雇用促進減税があります。また自治体によっては本店移転に補助金を交付する制度を用意しているところもあります。このように地域振興だけでなく、社員の勤務環境の改善や不動産の賃料などのコストカット、災害等に備えたリスクの分散にもつながると言われております。一方で首都圏から離れることにより人材確保が困難になること、取引先と距離ができることによるコミュニケーションの困難化などがデメリットとして指摘されております。
コメント
帝国データバンクの調査によりますと、2019年に首都圏に転入した企業は2年連続で前年を上回っており、転出は前年を下回っていたとされ、9年連続で転入超過状態にあったとされます。しかし2022年1月~6月の調査では転出企業が転入企業を44社も上回り、首都圏への転入は過去10年間で最小であったとのことです。このように近年過剰に集中していた首都圏への本社転入が一転、地方への転出に転じております。今回のゴーゴーカレーグループも本来のイメージどおり金沢に本店を移転させ、名実ともに金沢の企業になったということです。以上のように首都圏からの本店移転には様々なメリットやデメリットがあります。これからの自社の事業展開やコスト・人材の管理など様々な観点からどこに本店を置くのが最も適しているかを慎重に見極めていくことが重要と言えるでしょう。
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