ナガホリ、大量買付株主からの「役員職務執行停止の仮処分申立て」の却下確定
2023/11/29 商事法務, 訴訟対応, 会社法
はじめに
宝飾事業大手の株式会社ナガホリ(東証スタンダード上場)は11月21日、同社の株主であるリ・ジェネレーション株式会社がナガホリの役員の職務執行停止仮処分命令の申立てを行っていた件で、東京地方裁判所が10月31日に行った「却下決定」が確定したと発表しました。
昨年3月以来、経営権をめぐり熾烈な争いを見せているナガホリとリ・ジェネレーション。今回の却下決定までの経緯をご紹介します。
騒動は1年半以上前から
Sweet 10 Diamondのブランドで知られるナガホリとその株主であるリ・ジェネレーション。この2社間では、経営権をめぐる争いが生じていました。
2022年3月、リ・ジェネレーションなど、ナガホリの複数の株主らが、ナガホリの株式を大量に買い付けしていることが発覚。ナガホリ側は、リ・ジェネレーションらによるウルフパック戦術の疑いがあると危機感を募らせました。ウルフパック戦術とは、株主同士が協調関係にあることを隠しつつ裏で協調し、時機を見て一斉に対象会社の株式に攻勢をかけ、自身の要求(株価向上施策・株主還元)を実現させる投資戦術のことです。
事態を受け、ナガホリは、自社の買収を防ぐため、買収防衛策を講じていきました。その間も、リ・ジェネレーション側とナガホリ側は質問状・回答状を互いに送り合い、対話を続けて来ましたが、リ・ジェネレーションはナガホリに対し、名誉棄損に基づく損害賠償請求訴訟を提起するなど、両社の溝は日に日に深まっていました。
職務執行停止仮処分命令の申立てまでの経緯
一連の流れを受け、今年6月29日に開催されたナガホリの第62期定時株主総会。そこでは、
・剰余金の処分の件
・取締役 8 名選任の件
・監査役 1 名選任の件
・リ・ジェネレーションらによる株式買集め行為を踏まえた、大規模買付行為等への対応方針の継続・更新の件
が可決された一方、リ・ジェネレーション側から提案を受けた「取締役4名選任の件」については、いずれの候補者についても圧倒的多数の反対により否決される結果となっていました。
総会後、リ・ジェネレーション側は、
(1)2023年4月12日付けで行った「同年3月31日現在の株主名簿」の閲覧謄写請求に対し、開示の遅延があったこと
(2)リ・ジェネレーションが提案した4人の役員候補者に対し、ナガホリ側から不当な印象操作が行われたこと
など、決議の方法の著しい不公正があったとして、7月7日、東京地方裁判所に対し、株主総会決議取消訴訟の提起および役員の職務執行停止の仮処分命令の申立てを行いました。
ナガホリ側の主張と裁判所の判断
ナガホリ側は、リ・ジェネレーションの仮処分命令の申立て等に対し、以下の事実を挙げ反論しています。
・当初より、閲覧謄写請求に速やかに応じる条件として、リ・ジェネレーションに対し、「株主名簿に記載された株主に対し、QUO カード等の経済的利益をちらつかせて委任状を取得しないこと等を誓約すること」を求めていたにも関わらず、リ・ジェネレーション側が応じなかった
・定時株主総会の開催日の約2週間前である6月16日には、閲覧謄写請求に応じて株主名簿の写しをバイク便にて送付している
その上で、今回問題となっている閲覧謄写請求に対し、法令で認められた手続に則ってその適法性を争っていたに過ぎず、株主名簿の開示を不当に遅延させたという事実はないとして、そもそも、株主総会決議取消事由が存在しないと主張しました。
そして、東京地方裁判所は、10月31日、リ・ジェネレーションが行った、職務執行停止仮処分命令の申立てを却下する決定を下しました。その後、リ・ジェネレーション側が期限内に控訴しなかったため、却下決定が確定しています。
コメント
今回、職務執行停止仮処分命令の申立てについては、却下が確定しましたが、株主総会決議取消訴訟についてはいまだ訴訟係属中とされています。今回の却下決定が今後の訴訟にどのような影響を与えていくのか注目されます。
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