不適切会計でグッドスピードが提出を延期、有価証券報告書について
2024/01/10 商事法務, 金融法務, 金融商品取引法, 会社法, 自動車
はじめに
中古車販売大手「グッドスピード」(名古屋市)は4日、不適切会計で未提出となっていた有価証券報告書について、東海財務局が提出期限を3月29日まで延期を承認したと発表しました。9月期決算も同日までに公表するとのことです。今回は金商法が規定する有価証券報告書について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、グッドスピードは公表済みの決算で会計監査人から不適切会計があった疑いが指摘され、第三者委員会が10月から調査を進めていたとされます。第三者委員会の報告では顧客に引き渡す前の車両を既に納車したものとして売上を先行計上する事例が2023年9月期までの6年間で子会社のバイクも含め約6000件確認されたとのことです。これらが役員の指示に基づいていたことも確認されております。これにより1月4日が提出期限となっていた23年9月期の有価証券報告書も提出できない見通しとなっており東海財務局に期間延長の承認申請を行っていたとされます。新たな提出期限は3月29日とのことです。
有価証券報告書とは
有価証券報告書とは、株式などの有価証券を発行する上場企業などが開示する企業情報を言います。具体的な内容は企業概況、事業状況、財務諸表などとなっておりEDINET(電子開示システム)を通じて一般にも公開されます。有価証券報告書は企業外部の投資家に企業の経営状態など内部情報を開示させ、それにより投資判断を適切に行えるようにすることが目的とされております。有価証券報告書の提出義務がある企業は事業年度終了後の3ヶ月以内に内閣総理大臣に提出する必要があります。3月決算の会社の場合は6月末日が期限とされます。有価証券報告書は提出義務だけでなく会計監査人による監査も必要とされます。
有価証券報告書の提出義務
それではどのような会社に有価証券報告書の提出義務が課されているのでしょうか。関東財務局のHPによりますと、原則として(1)金融商品取引所に上場されている有価証券を発行している会社、(2)店頭登録されている有価証券を発行している会社、(3)募集または売出しにあたり有価証券届出書または発行登録追補書類を提出した有価証券を発行している会社、(4)所有者数が1000人以上の株券、優先出資証券、所有者数が500人以上のみなし有価証券(出資総額が1億円以上)を発行している会社とされております。なお有価証券届出書の場合は金額と勧誘人数によって決まっており、勧誘人数が50人以上で1億円以上の募集・売出しで提出義務が発生します。提出された有価証券報告書も有価証券届出書も公衆縦覧期間は受理した日から5年とされます。
有価証券報告書に関する規制
有価証券報告書の重要な事項につき虚偽記載または記載すべき重要な事項の記載が欠けている場合、罰則として10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科されることとなります(金商法197条)。対象は企業の代表、役員、監査役、会計監査人などとなっており、また法人に対しても両罰規定として7億円以下の罰金が科されることとなります(207条)。さらに有価証券報告書虚偽記載については課徴金の対象となっており、会社の企業価値総額の0.006%もしくは600万円の高い方となります(172条)。これら以外にも監督官庁による業務改善命令や業務停止命令などの行政処分、証券取引所による監理銘柄指定、上場廃止といった処分がなされる場合もあり得ます。
コメント
本件でグッドスピードは納車前の車を売上に先行計上していたとされ、役員の指示によることも確認されているとされます。このいわゆる「ウソ納車」は6年間にわたり約6000千台がなされ、対象となる車両も店舗ごとに取りまとめられていたとされます。2023年9月期分の有価証券報告書は会計監査人の指摘により現在未提出となっておりますが、過去の提出分で虚偽記載が見つかった場合は罰則などの処分もあり得ると考えられます。以上のように証券取引所に上場している企業は金商法により有価証券報告書等の提出が義務付けられます。適切に企業の状況を投資家に知らせることが目的とされ、虚偽記載等があった場合は重い罰則が規定されております。今一度規制内容を確認し、社内で周知することが重要と言えるでしょう。
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