五輪談合事件で指名停止中の電通・博報堂に、都が特命随意契約で事業発注
2024/04/18 契約法務, 行政対応, 行政法, 広告
指名停止中の広告大手2社と都が随意契約締結
東京オリンピック・パラリンピックをめぐる談合事件で指名停止となっている広告大手の電通および博報堂に対して、東京都が「特命随意契約」で約13億円規模の事業を発注していたことが明らかとなりました。
自治体が入札を通さずに企業と契約を結ぶことができる「随意契約」。入札よりも時間も手間も省けることから、主に契約金額が低いケースなどで活用されています。しかし、税金が投入される事業となる以上、随意契約の性質に照らしたうえで、条件面等を慎重に精査して締結する必要があります。
特命随意契約締結の経緯
東京オリンピック・パラリンピックをめぐっては、大会組織委員会の元理事らが、大会スポンサー企業から賄賂を受け取ったなどとして逮捕され、世間に大きな衝撃を与えました。
その一方で、「イベント企画やスポンサー選定にあたり、落札予定の企業を事前に決めるなどの談合があった」として、公正取引委員会は株式会社電通や、株式会社博報堂DYホールディングスなど6社を告発し、現在も裁判が続いています。
東京都は、談合事件を受けて、電通や博報堂などを2023年2月から2024年8月まで指名停止措置(都の発注事業の入札等への参加資格剥奪)としていますが、この指名停止期間中に、東京都が電通・博報堂と「特命随意契約」を締結し、電通には約5000万円、博報堂には約12億8000万円、合わせて約13億3000万円の事業を発注したということです。
発注内容としては、「都の魅力や都政を紹介する番組制作・放送」とのことですが、報道等によりますと、都は今回、電通・博報堂に発注を行った理由として、
・ルール上、指名停止となった事業者との間で「特命随意契約」を締結することに問題はないこと
・番組に関する著作権等の権利は電通・博報堂にあり、他社への代替は困難と判断したこと
・指名停止前から放送していた継続性を重視したこと
などを挙げているといいます。
しかし、大きく報道された事件に関連して指名停止となった2社への発注となったため、都民からは戸惑いや契約締結を疑問視する声があがっています。
随意契約とは
随意契約は、国や地方公共団体などが競争入札によらずに任意に決定した相手と締結する行政契約です。手続きが煩雑で契約締結までに2ヶ月前後を要する入札方式よりも迅速に事業を進められる一方、透明性に欠ける点がデメリットとして挙げられます。
そんな随意契約ですが、条件や方式によって、特命随意契約、不落随意契約、少額随意契約の大きく3つに分類されます。
(1)特命随意契約
特定の一業者を指名して行う随意契約
(2)不落随意契約
入札の結果、落札者がいない場合に商議により締結する随意契約
(3)少額随意契約
予定価格が少額の場合、2社以上の業者に見積書を取り、契約者を決定する随意契約
随意契約は、特定の特許を持つ企業との契約など、競争が適さない場合などに締結が可能とされており、各自治体は策定したガイドラインにしたがい、発注先の選定を行っています。
例えば政府の場合には
・義務教育諸学校の教科書購入
・電気、ガス等の供給(供給元が一の場合のみ)
・抗インフルエンザウィルス薬等の購入等
といったケースで随意契約が活用されているということです。
上述のように、随意契約が用いられるのは、一般入札よりも手続きが短く簡素化されているからです。
しかし、税金が事業に使われるため、なぜその事業者・製品を選定したのかを説明する必要があり、「随意契約理由書」の作成が求められます。
コメント
締結プロセス上、不正の温床となるリスクが高いといわれる特命随意契約。その特命随意契約を、談合を理由に指名停止となっている事業者と締結し、高額発注を行った都の対応に疑問を呈する声があがっています。
特命随意契約の発注側のデメリットとして、競争入札による競争原理が働かないがゆえに、金額面・品質・納品スピード等の面での妥当性が不透明となりやすい点があります。
ましてや、競争原理を排除して不当に利益を得る「談合」により処分を受けている事業者を相手に、特命随意契約を締結する場合には、相当に慎重な対応と、事業者の選定プロセスや契約内容の透明性が求められます。
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