県の中止命令聞かず、違法な盛り土造成か?会社役員ら逮捕
2024/06/10 コンプライアンス, 行政対応, 環境法務, 環境法, 行政法, 建設
はじめに
福島県で許可なく違法な盛り土をした疑いで、茨城県つくば市の土砂処分業会社の役員と従業員が逮捕されました。
役員らは、県知事の許可を受けず、2023年12月から2024年2月までの間、林に1ヘクタール以上の盛り土を造成するなどの開発行為をした疑いが持たれています。
盛り土造成については、「盛土規制法」で厳格に規制されています。
県の許可なく大規模な造成したか
逮捕されたのは、茨城県つくば市の土砂処分業会社の役員の男と、従業員の男です。
2人は共謀のうえ、2023年12月から2024年2月にかけて、知事の許可を得ずに1ヘクタールを超える規模で福島県西郷村の民有林に盛り土を行ったなどの森林法違反(無許可開発、中止命令違反)の疑いが持たれています。
盛り土は政令で定められた規模を超えていたため、県知事の中止命令を受けていました。しかし、2人は盛り土の造成をやめなかったということです。
逮捕後の捜索で、関係先から土地の登記簿が多数発見されました。会社は、事業として建設残土を受け入れており、逮捕容疑となった現場以外にも、盛り土を造成する場所探しを行なっていた可能性があるということです。
福島県では、盛り土規制法に基づく規制区域が、2024年9月までに県内全域に拡大することになっています。そのため、規制前に、登記簿で所有者を調べ、土地を購入しようとしていたとみられています。
報道などによると、役員の男は容疑を一部認めているとのことですが、従業員の男は「違法だとは思わなかった」と容疑を否認しているそうです。
森林法における開発規制
森林法とは、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項を定めたものです。森林の保続培養と森林生産力の増進を図るため、森林計画、保安林その他の森林に関する基本的事項が定められています。
国が所有する「保安林」か、「民有林」かにより、開発における規制や手続きが異なるのが特徴です。
■保有林
・開発の規模に関係なく適用されます。
・保安林を転用するためには、農林水産大臣または都道府県知事が保安林の指定を解除することが必要となります。
■保安林以外(民有林)
・1haを超える開発では、「林地開発許可制度」により都道府県知事の許可が必要となります。①災害の防止、②水害の防止、③水の確保、④環境の保全の4つが許可を受けるための要件です。
・1ha以下の開発では規制はありません。ただし、伐採に際して、「伐採及び伐採後の造林の届出」を市町村に事前提出することが必要となります。
今回、役員らが逮捕された会社では、別の土地でも違法な盛り土造成を行なっていたとみられています。
役員は当初、村に開発許可を求める際、開発の規模を「1ヘクタール未満」と申請していましたが、今年2月、実際には開発エリアが拡大していることがわかりました。
福島県は、役員工事中止と復旧計画の提出を求める行政指導を実施。しかし、期限内に復旧計画が提出されず、その理由を弁明する文書の提出もありませんでした。
福島県は今年6月に復旧命令を出し、9月上旬までに着工に応じた場合、来年2025年1月末までの工事完了を求めるということです。
盛土規制法で安全性確保へ
福島県が盛り土の規制を強化する背景には、「盛土規制法」の制定があります。
「宅地造成及び特定盛土等規制法」は、通称「盛土規制法」(2023年5月26日施行)と呼ばれ、名前の通り、盛土をめぐる法律です。
2021年に静岡県熱海市で発生した土石流災害での被害を受けて、「宅地造成等規制法」を抜本的に改正し、土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を包括的に規制。福島県に限らず、各都道府県が規制案をまとめるなどし、対策に動いています。
この規制の主なポイントは以下の4つです。
(1)規制区域の指定
盛り土等により人家等に被害を及ぼしうる区域は、宅地、農地、森林等の土地の用途にかかわらず、全国一律の基準のもと、都道府県知事等が規制区域として指定します。
(2)盛り土等の安全性の確保
各都道府県知事等は、盛り土等が行われるエリアの地形・地質等に応じて、災害防止のために必要な許可基準の強化を行えます。
(3)責任の所在の明確化
盛り土等が行われた土地について、過去の盛り土などを含めて、土地所有者等が常に安全な状態に維持する責務が課されています。
また、土地所有者等に加え、原因行為者に対しても、是正措置等が命じられる場合があります。
(4)罰則
無許可行為や命令違反等に対し、最大で懲役3年以下、罰金1,000万円以下、法人重科3億円以下が科されます。
危険な盛土等を規制する取り組みが始まります(国土交通省・林野庁森林整備部治山課)
コメント
違法な盛り土が行われた西郷村の住民の間では、ゲリラ豪雨等による盛り土の崩落を懸念する声も聞かれます。
一方、今回逮捕された役員の男は、栃木県の那須烏山市・日光市など複数の自治体で大量の土砂の無許可運び込みなどで行政処分を受けているといわれています。
危険を伴う開発行為。自社が直接開発行為を行う場合はもちろんのこと、建設残土の処理等を委託する際も、取引先事業者が適切なプロセスを踏んでいるか確認することが重要です。
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