Mrs. GREEN APPLE新曲MV“差別的”と批判殺到、公開停止に
2024/06/19   コンプライアンス, 広告法務, エンターテイメント, 広告

はじめに


3人組人気バンドMrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)の新曲ミュージックビデオが、内容が差別的だとの理由で公開停止となりました。

この新曲は日本コカ・コーラ株式会社がキャンペーンソングとして起用していましたが、問題となったミュージックビデオが公開された翌日以降、同曲を使用した広告素材の放映をすべて停止したということです。

所属のレコード会社は「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」として謝罪しています。

 

ミセス新曲MV“人種差別だ”SNS上で批判

Mrs. GREEN APPLEは2023年の年末にNHK紅白歌合戦に初出場したほか、カラオケの「DAM 2024年上半期カラオケランキング」で楽曲が1位となり、最も歌われた曲となるなど人気を集めています。

しかし、このバンドが新たにリリースした新曲「コロンブス」のミュージックビデオが物議となっています。
このビデオは、500万年以上前の時代を、別時代の偉人が旅をするという設定で、メンバー3人がそれぞれ、コロンブス・ナポレオン・ベートーベンとみられる人物に扮し、南の島を訪れるストーリーになっていました。

ただ、島で出会った類人猿に、コロンブスらに扮したメンバーらが音楽や馬の乗り方を教える場面や、人力車を類人猿に引かせる場面などが登場。
それらのシーンについて、「植民地主義と奴隷制を肯定している」「人種差別をエンタメとして楽しんでいる」としてSNS上で批判が相次ぎました。

批判はビデオがネット上で公開された直後から出始めましたが、バンドが所属するユニバーサル ミュージック合同会社は公開翌日の13日午後、ビデオを公開停止としました。

ユニバーサル ミュージックは公開停止とした理由について、「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていたため」だと説明し、社内で公開前の確認が不十分だったと陳謝しました。

 

日本コカ・コーラ“遺憾”


また、同曲は日本コカ・コーラのキャンペーンソングとして書き下ろされており、6月3日から同曲を使用したCMが放映されていました。しかし、今回の事態を受けて、ミュージックビデオの公開翌日以降、CMの放映を停止しています。

ミュージックビデオの公開停止とCMの放映停止に関し、日本コカ・コーラは「いかなる差別も容認していない」と表明し、今回の事態を“遺憾”に受け止めているとコメントしています。一方、ビデオの内容は会社として事前に把握していなかったとのことです。

 

広告制作、SNS投稿で企業が注意すること


これまでにも、企業や著名人による情報発信が不適切だとして、CMが公開中止となったり、謝罪に至った事例があります。

2019年には、日清食品が放映した広告で、アニメキャラクターとして描かれたテニスの大坂なおみ選手の肌が本来よりも白く描かれていると批判を浴びました。海外からも「ホワイトウォッシュ」ではないかとの批判があり、広告の配信が中止される事態となりました。

昨今は、広告だけでなく、企業のSNS投稿が不適切であると批判を集めるケースもあります。

適切な情報発信を行うために、広告や投稿、表現物が、

・人種差別
・歴史理解
・演出での危険性
・異文化への敬意
・ジェンダー、LGBTQ、ルッキズム批判

などが含まれている内容ではないかを確認し、注意を払う必要があります。

また、国内外での事件や話題などにもアンテナを張ることも大切です。投稿や配信の内容が事件などとリンクすることで“不適切”と判断される場合があるからです。

状況や事件の反響などによっては公開を延期するなど、世相に配慮した柔軟な対応を取ることが望ましいでしょう。

 

コメント


今回のミュージックビデオの公開停止を受け、Mrs. GREEN APPLEの公式サイトでは、ボーカルの大森元貴さんが「差別的な内容にしたい、悲惨な歴史を肯定するものにしたいという意図はありませんでした」と悪意はなかった旨説明しています。

一連の批判に対し、SNS上では、「メンバーたちに差別意識があってビデオを作っているわけではない」、「異世界ファンタジーとして楽しめば良いのでは」などと擁護する意見もありました。

一方で、アメリカでは2020年に黒人男性ジョージ・フロイドさんが逮捕時の拘束等が原因で亡くなったことをきっかけに拡大した警官暴力への抗議運動により、コロンブス像が相次いで破壊・撤去されています。
コロンブスに対し、米国先住民の虐殺を招いた人物と評価する声も少なくないといいます。

発信した情報がSNS等を通じて、瞬く間に全世界に拡散される時代。自社が発信する情報が各国の国民からどのように解釈されるのか、各国の世相などに注意深く目を配りながら、慎重に精査する必要があります。

 

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