国民生活センターが注意喚起、景品表示法のステマ規制について
2024/07/10   コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法

はじめに

 販売業者が高評価口コミと引き換えに報酬提供を持ちかけるケースが確認されており、国民生活センターも注意喚起しております。このような行為はステマに当たる可能性があるとのことです。今回は景品表示法のステマ規制について見直していきます。

 

事案の概要

 毎日新聞の記事によりますと、ネット通販サイトで商品を購入した際、販売業者から、サイトの口コミ欄に最高評価を書き込めば1500円分のギフト券を受け取れるという内容の案内が届く例が見られるとされます。さらにその内容には、レビューにギフト券が受け取れる旨を書き込まないよう、口外を禁止する記載もあったとのことです。国民生活センターはこのような事例はステマに当たる可能性があると指摘し、注意喚起を呼びかけているとされます。消費者庁は先月、グーグルマップの口コミで高評価をする見返りとしてワクチン接種料金を割り引くと依頼したとして、東京都内の医療機関に措置命令を出しておりました。

 

景品表示法とステマ規制

 景品表示法では、不当表示として優良誤認表示(5条1号)、有利誤認表示(同2号)、その他、誤認されるおそれがある表示(同3号)が規制されております。優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや事実に相違して著しく有料であると一般消費者に誤認される表示を言います。有利誤認表示とは、商品やサービスなその取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を言います。景品表示法5条3号では、これらの他に一般消費者に誤認されるおそれがある表示を特に指定して禁止しております。具体的には無果汁の清涼飲料水について果汁や果肉が使用されていないにもかかわらず、果肉の写真を使用するなど、無果汁である旨を明瞭に表示していない場合に不当表示となります。これ以外にも商品の原産国や、消費者信用の有し費用、おとり広告、有料老人ホームに関する表示が指定されております。そして現在ではこれらに加えステルスマーケティング(ステマ)についても指定されております。

 

ステマ規制

 SNSやレビューサイトの口コミは一見、消費者やインフルエンサーなど第三者による評価に見えます。しかし実際には商品を販売する業者に依頼された広告である場合もあります。このような手法を「ステルスマーケティング」と言います。広告であるとわからなければ、消費者は合理的な商品選択をすることができません。そこで景品表示法ではこのようないわゆるステマを規制しております。より正確には、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」と定義されております(令和5年3月28日内閣府告示19号)。広告に事業者の表示がされているかが明瞭かどうかについては、特定の文章や図表、写真などから受ける印象ではなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となるとされております。事業者の表示があっても、動画内で極めて短い時間表示する場合や、認識しにくい文言、場所、大きさ等で表示する場合、大量のハッシュタグに紛れさせる場合などは不当な表示となる可能性が高いと言えます。

 

ステマ規制に違反した場合

 ステマ規制の対象は商品やサービスを供給する事業者(広告主)です。事業者から広告や宣伝の依頼を受けて表示や制作を行う、インフルエンサーやアフィリエイターなどは規制対象外とされております。表示を掲載しただけの出版社や新聞社、ただたんに商品・サービスを陳列して販売している者、取引の場を提供しているだけの者も同様に対象外です。違反した場合には消費者庁により、違反行為の差止、違反したことを一般消費者に周知徹底すること、再発防止策を講ずること、違反を将来繰り返さないことなどを命じる措置命令が出されます。措置命令の内容は公表されることとなります。なおステマ規制違反については現時点では課徴金の対象とはなっておりません。

 

コメント

 近年インターネットやSNSの普及により、それらを使用した広告が急速に拡大しております。それに伴い合理的な根拠のない優良誤認表示や有利誤認表示に当たる広告、そしていわゆるステルスマーケティングも劇的に増加しているとされます。消費者庁の検討会報告書によりますと、現役インフルエンサーに対するアンケート調査では、41%が事業者からステルスマーケティングの依頼を受けたことがあると答えているとのことです。しかしこのようなステマ広告は、上でも触れたように一般消費者に誤解を生じさせ、合理的な商品選択を阻害することとなります。また依頼先であるインフルエンサーにも、ステマの片棒を担がせることとなり、事業者共々イメージダウンを免れないと言えます。高評価口コミに報酬を与えたりしていないか、自社のマーケティングを今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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