中学生らがCO2排出量削減求め火力発電事業者を提訴、オランダでは企業敗訴の事例も
2024/09/04   訴訟対応, 環境法務, 環境法, エネルギー関連

はじめに


10代から20代の若者たちが2024年8月6日、火力発電事業者らに対し、二酸化炭素の排出量削減を求め、名古屋地方裁判所に提訴しました。

アメリカや欧米の一部の国でも政府やCO2排出企業などに対する気候訴訟が相次いでおり、オランダでは航空会社が敗訴した事例もあります。

 

火力発電事業者がCO2排出削減求め提訴される

今回、訴訟を提起したのは北海道、東京、愛知、秋田、神奈川などに住む15歳から29歳までの16人です。原告の中には、中学生も含まれているといいます。

被告となったのは、株式会社JERA、東北電力株式会社、電源開発株式会社(J パワー)、関西電力株式会社、株式会社神戸製鋼所、九州電力株式会社、中国電力株式会社、北陸電力株式会社、北海道電力株式会社、四国電力株式会社の10 社です。

JERAは東京電力グループと中部電力の共同出資企業でCO2排出量は日本最大級とみられています。また、原告の主張によると、この10社は日本のエネルギー起源CO2(エネルギー消費や利用を目的に化石燃料を燃焼させた際に発生するCO2)の排出量の4割を占める大排出企業だということです。

訴状では、被告10社において、世界的な削減目標と整合された目標設定などがされていないうえ、CO2排出量の多い石炭火力発電を2050年まで運用を継続しようとしていると主張。
「先進国である日本は、より高い排出削減が求められており、今後も地球温暖化が止まらない場合、将来の生活に影響がある」として、16人はCO2削減を求め、名古屋地方裁判所に提訴しました。

 

オランダでは企業が敗訴


今回のように、企業や国を相手に気候変動に関する訴訟(以下、「気候変動訴訟」)を提起する動きは、世界中で広がっているといいます。

イギリスの研究機関が2023年に発表した報告書によりますと、同年5月までに世界では約2300件の気候変動訴訟があったということです。
それらの訴訟例の中には、被告となった企業が敗訴したケースもありました。

代表的な例が、オランダの気候変動対策団体が、航空会社であるKLMオランダ航空を訴えた裁判です。

団体側は、KLM航空が19の広告において、「グリーンウォッシング」を行っていると主張しました。
「グリーンウォッシング」とは、環境によく、エコな印象を連想させる「グリーン」と、ウソをごまかす、上辺だけという意味のある「ホワイトウォッシュ」という言葉を組み合わせた造語です。環境に配慮しているように見せかけて、実際には企業が利益を優先にしていることなどを指します。

団体によると、KLM航空はそれらの広告を通じて、同社の航空サービスを利用することの環境的利点について誤解を誘発し、「KLM航空の活動が実際よりも環境に優しいという印象を与えている」と訴えていました。

アムステルダム地方裁判所は2024年3月、KLM航空の19の広告のうち15の広告に関し、その内容が誤解を招くとの判断を下しました。
具体的には、以下の表現などが問題視されています。

■「より持続可能な未来を創るために私たちと一緒に働きましょう」という表現
→KLM航空の航空サービスを利用することと環境上の利益がどのように関係しているのか説明されていない点で誤解を招く。

■「飛行による排出量を相殺する方法として植林を行っている」旨の表現
→環境への悪影響をわずかに軽減するに過ぎないにも関わらず、KLM航空での飛行は環境に優しいという誤った印象を与える。

 

コメント


近年の地球温暖化を受け、脱炭素・クリーンエネルギー転換など、世界中で経済のグリーン化を目指す動きが加速しています。

そんな中、企業が環境対策を怠ったり、逆に、グリーン化の動きに便乗した実態を伴わない広告コピーを載せることは、訴訟や行政処分等のリスクを高めることになります。

国内でも、2022年12月に消費者庁が、“生分解性”をうたっていたプラスチック製のカトラリー類やレジ袋などに「自然環境で使い捨てされても完全に分解される」などの表示があることについて、優良誤認にあたると判断。10社に対し措置命令を行っています。

原告側弁護団によると、日本で気候変動対策に関し全国規模で集団訴訟が提起されるのは初めてといいます。今後の裁判の動向が注目されます。

 

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