消費者庁が実態調査結果を発表、「顧客満足度No.1」表示の問題点
2024/10/02 コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法
はじめに
消費者庁は9月26日、商品やサービスの「顧客満足度No.1」などと表示する広告について、実態調査した結果を公表しました。
これは「顧客満足度No.1」などの宣伝文句に根拠なく表示し、景品表示法違反となった事例が相次いだことを受けて、消費者庁が調査を行なったものです。
その結果、事業者のほとんどが「No.1」の根拠を把握せずに表示していたことが分かりました。
今回はNo.1表示などの問題点について見直していきます。
顧客満足度No.1などの表示増加も根拠なし
昨今、第三者の主観的評価を指標とする「No.1」表示が頻繁にみられるようになりました。
(例)
・顧客満足度No.1
・おすすめしたいNo.1
・口コミ人気No.1
・~に悩む方の◯%が利用したいと回答
それに伴い、こうした「No.1」表示に関する景品表示法違反事例が増加しており、令和5年度では13事業者に措置命令が出されたとされます。
今年に入っても、分譲住宅販売会社の飯田グループホールディングス株式会社とその子会社4社が、景品表示法違反(優良誤認)を理由に再発防止などを求める措置命令を受けています。自社サイトやチラシなどで「高品質なのにローコストな注文住宅会社No.1」「飯田グループの注文住宅は顧客満足度No.1」などと明確な根拠がないにもかかわらず表示したとのことです。
こうした措置命令を受けた事業者の多くは、調査対象の商品・サービスやこれと比較する競合商品等のウェブサイトを閲覧させ、「顧客満足度が高いと思うものを選んでください」等の質問をして回答させる、“イメージ調査”を表示の根拠としていたといいます。
消費者庁のヒアリング調査によりますと、これらの表示を行っていた理由として、競合他社が同様のNo.1表示を行っていることという回答が最も多く、次に他社製品と比べて自社製品が見劣りするのを避けるためとの回答も見られたとされます。中には、No.1表示に至った経緯として、調査会社やコンサルティング会社から「1フレーズ10万円」等の勧誘や提案を受けたとする事業者もあったとのことです。
「No.1」表示と景品表示法
「顧客満足度No.1」などといった表示をするに際して、合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には景品表示法違反となる可能性があります。
景品表示法第5条では、事業者が「自己の供給する商品または役務について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると表示、または同業他社の製品よりも著しく優良であると表示して一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある場合」を優良誤認表示として禁止しています(1号)。
また、価格や取引条件について実際のものまたは同業他社の製品よりも著しく有利であると一般消費者に誤認させる場合も有利誤認表示として禁止しています(2号)。いわゆる、No.1表示についてもこれらの不当表示に該当するおそれがあるということです。
合理的な根拠
上記のようにNo.1表示等に合理的な根拠がなければ不当表示となります。それではどのような場合に合理的な根拠が認められるのでしょうか。消費者庁のガイドラインによると、合理的な根拠と認められるためには次の4点を満たしている必要があるとされます。
(1)比較対象となる商品・サービスが適切に選定されていること
(2)調査対象者が適切に選定されていること
(3)調査が公平な方法で実施されていること
(4)表示内容と調査結果が適切に対応していること
とされます。
「No.1」を訴求する以上、原則として(1)主要な競合商品・サービスを比較対象とする必要があり、また、(2)調査対象を選定するに際しては、実際に商品・サービスを利用したことがある者を対象とする必要があります。
仮に、調査対象者が商品・サービスを実際には利用したことがなく、単にイメージだけを調査した場合は表示根拠としての合理性が問題となります。また、「医師の○%が推奨」などと表示する場合、調査対象となった医師の専門分野が対象商品とは異なる場合も問題となります。
さらに、調査方法として、自社製品を選択肢の最上位に固定するなど恣意的な方法で実施された場合も合理性が否定される要因となるため注意が必要です。
景品表示法違反防止に向けての取り組み
景品表示法第26条1項によると、事業者は、表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、商品または役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないとされています。
消費者庁の指針では、
・景品表示法の考え方の周知・啓発
・法令遵守の方針等の明確化
・表示等の根拠となる情報の確認
・表示等の根拠となる情報の共有
・表示等を管理するための担当者等を定めること
・表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置をとること
・不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応を講じること
が求められています。また、一般消費者が表示の根拠となる情報を確認できるようにすることが望ましいとされます。
コメント
近年インターネット広告などで「顧客満足度No.1」「医師の○%が推奨」といった表示が急激に増加しています。
消費者庁が実施した消費者1000人に対するアンケートで、これらの表示が購入の意思決定に影響を与えると答えた割合が50%近くに上ったとされます。
また、「医師の90%が推奨」との表示について、同種の他社商品と比べて優れていると思うと回答した割合も約5割とのことです。
このように、これらの表示が消費者の選択に与える影響は大きいと言えますが、多くの場合で合理的な根拠が示されていないと指摘されています。
特に顧客満足度等の調査については、実際に使用した消費者ではなく、単に消費者がイメージで満足度が高そうと思うといった抽象的なものが多いといいます。
表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、実際のもの、競合他社の製品などよりも“著しく優良または有利である”と一般消費者に誤認されるため、不当表示として景品表示法上問題となります。自社製品に安易に「No.1」表示をしていないか、その表示の根拠を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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