ダイドーリミテッドが1億円に減資へ、資本金・準備金減少について
2024/10/10   商事法務, 総会対応, 会社法, 小売

はじめに

 衣料品ブランド「ニューヨーカー」を展開するダイドーリミテッドは3日、資本金を約68億円から1億円に減資する旨発表しました。減少分はその他資本剰余金に組み替えるとのことです。今回は資本金と準備金の減少について見直していきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、ダイドーリミテッドは12月17日に臨時株主総会を開催し、資本金と資本準備金、利益準備金を減少させ、減少分はその他資本剰余金、その他利益剰余金に組み替える旨を発表しました。同社は2025年3月期以降、最大で50億円の自社株買いと配当を24年3月期の50倍となる100年にするなど、大幅な株主還元をする方針とされ、その原資に充てるとのことです。減資の効力発生日は25年1月1日で、同社は資本金1億円以下の中小企業扱いとなる見通しとされております。なお減資の際には払い戻しは行われず、無償減資となることから発行済株式総数に影響はないとのことです。

 

資本金・準備金の減少

 資本金とは、会社が事業を進めるための元手となる資金であり、株主からの出資によって形成されます。貸借対照表の純資産の部に計上され、その額は登記もなされます。募集株式の発行など新しく株式が発行され、それに対して引受人が出資すると資本金が増加することとなります。一方で準備金とは、将来の支出や不測の事態に備えて置いておく資金を言います。株式発行などの際に出資された額のうち半分を超えない範囲で計上されることがあります。会社の財務的な安定性を高める役割を果たすと言えます。株式会社には資本金、準備金、剰余金があり、準備金は資本準備金、利益準備金、剰余金は資本剰余金、利益剰余金に分かれます。資本金を減少させた場合、資本準備金に組み入れるか、欠損金がなければその他資本剰余金に計上されます。準備金の場合は、資本金に組み入れない場合は資本準備金はその他資本剰余金、利益準備金はその他利益剰余金に計上されることとなります。

 

資本金減少の手続き

 資本金減少の手続きとしてはまず、株主総会による特別決議が原則として必要です(会社用447条、309条2項9号)。例外として定時株主総会で欠損填補を目的とする場合は普通決議で足ります(309条2項9号括弧書き)。また株式発行と同時に増加する資本金の範囲内で減少させる場合は取締役会決議で可能です(447条3項)。資本金を減少させる場合は必ず債権者異議手続きを要します。具体的には官報での公告と知れている債権者への個別催告、または定款で定められた方法による公告となります(449条4項)。この際、異議を述べた債権者がいる場合は弁済か担保提供、または供託をすることとなります。その後効力発生日に資本金が減少し、2週間以内に登記することとなります(915条1項)。

 

準備金減少の手続き

 準備金減少の場合は、原則として株主総会の普通決議が必要ですが、株式発行と同時に、増加する準備金の範囲内で減少させる場合は取締役会決議で可能です(448条3項)。また監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社、会計監査人設置会社のいずれかで、取締役の任期が1年、定款に授権の定めがある場合、欠損填補を目的とするときは取締役会決議で可能となっております(459条1項2号)。準備金減少の場合も原則債権者異議手続きが必要ですが、減少分の全部を資本金に計上する場合や、定時総会で欠損填補を目的とする場合は不要とされます(449条1項但し書き)。やはりこの場合も効力発生日に準備金が減少しますが、準備金を資本に組み入れる場合以外は登記は不要です。これは準備金が登記事項ではないためです。

 

コメント

 本件でダイドーリミテッドは約68億円にのぼる資本金を1億円にまで減少させ、資本準備金も2500万円にまで減少させます。また現在約9億5000万円計上されている利益準備金も0円に減少させ、すべてその他資本剰余金、その他利益剰余金に組み替える予定とのことです。債権者異議手続きの公告は10月21日、債権者異議申述最終期日は11月20日とのことです。来年1月1日に効力が発生する予定です。以上のように会社の資本金や準備金は株主総会決議等で減少させ、剰余金とすることが可能です。ただしその際には原則として債権者異議の手続きを要します。近年では東証プライム等に上場する大企業も1億円まで減資して税制上の中小企業となる場合も急増しております。これらの手続きについて確認し、準備しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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