そば粉「純国産」偽装か?製粉会社会長ら不正競争防止法違反容疑で逮捕
2024/11/13 コンプライアンス, 行政対応, 広告法務, 消費者取引関連法務, 不正競争防止法, 食料品メーカー, 小売
はじめに
外国原産を混ぜたそば粉を「純国内産」などと偽って販売した疑いで、11月11日、滋賀県の製粉会社、株式会社山本そば製粉の会長ら3人が不正競争防止法違反(誤認惹起表示)および詐欺未遂の疑いで逮捕されました。
国産よりも仕入れ価格の安い外国産を混ぜて、利益を得ようとしていたとみられています。
十数年前から偽装か
報道などによりますと、逮捕されたのは「山本そば製粉」の会長・社長・営業部長です。
3人は共謀して、海外から輸入した外国産のそば粉と国産そば粉を混ぜた商品を【純国内産そば粉】【北海道(キタワセ種)上川】とラベルを貼り、産地を偽って表示した疑いが持たれています。
商品は今年5月下旬ごろ、大阪府の会社に10キロ納品されており、会社はその代金として約7,000円を請求したとみられています。
そのため、滋賀県警は11月11日に3人を不正競争防止法違反(誤認惹起表示)と詐欺未遂の疑いで逮捕しました。
滋賀県警が押収した山本そば製粉の帳簿上、外国産の原材料の仕入れ価格が平均して国産の半分程度の価格となっているとのことで、安い外国産のそば粉を混ぜて、利益を少しでも多く得る狙いがあったとみられています。
また、余罪についても疑われています。滋賀県は、今年6月11日から10月23日までの期間、山本そば製粉に対し立入検査を行っていましたが、調査の結果、少なくとも2020年4月から2024年3月までの間に、合計約68トンの偽装販売を確認したということです。
滋賀県警では、少なくとも10数年前から山本そば製粉が偽装販売を行っていたとみて捜査を進めていますが、2012年以降、山本そば製粉と取引のある会社は全国約5千社にのぼるそうで、被害の全容解明が求められます。
なお、一連の事件を受け、滋賀県は11月11日、山本そば製粉に対して、食品表示法に基づき、表示の是正、原因の究明・分析の徹底および再発防止対策の実施等について指示を行ったと発表しています。
株式会社山本そば製粉における「そば粉」の不適正表示に対する措置について(滋賀県)
誤認惹起表示について
不正競争防止法が禁じる「商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示」とは、商品、役務又はその広告等に、その原産地、品質、内容等について誤認させるような表示をする行為、又はその表示をした商品を譲渡等する行為をいいます(不競法第2条1項20号)。
商品の原産地、サービスの質などは、消費者が購入する際に他の商品などと比較して選ぶ上で重要な情報です。そのため、事実と異なる表示が記載されて、消費者が誤認してしまうのは公平な取引をする上で問題となります。
誤認表示をした事業者が競争上不当に優位な立場に立つことを避けるためにも表示規制がされています。
規制に該当する行為があったと認められ、営業上の利益を侵害された者は差し止めや損害賠償請求をすることが可能です。
加えて、今回の事件のように違反行為に対し刑事罰が科せられる場合もあります(5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれら両方)。
誤認惹起行為が法人業務に関して行われた場合には、法人に対して3億円以下の罰金刑が科されることになります。
コメント
独立行政法人 農林水産消費安全技術センターによると、食品偽装表示が起こりやすい食品の特徴として、
・国産品と輸入品との価格差が大きい
・品種間の価格差が大きい
・輸入量が国内生産量を大きく上回っている
・原料の不足、不作、不漁
などが挙げられるといいます。
今回、問題となった「そば粉」については、原料(玄ソバ)の多くを輸入に頼っており、中国産・北米産などがその多くを占めるとされています。価格も外国産が国産と比べ、かなり安価なことから、やはり食品偽装表示が起こりやすい食品だったといえます。
しかし、一度、食品偽装表示を行った会社というイメージがついてしまうと、その悪評を拭うことは困難で、経営面でも長期にわたり大きなダメージを負うおそれがあります。
また、DNA分析や元素分析、安定同位体分析、成分分析など、高度な科学技術を用いた検査による監視も強化されています。
「食品偽装表示は、どこかで絶対にばれるもので、経営に深刻なダメージを与えるものだ」ということを、経営層を含め社内で広く周知する必要があります。
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