大正製薬がインフルエンサーを利用したステマで再発防止措置命令
2024/11/20   コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法, 医療・医薬品

はじめに


製薬会社大手の大正製薬株式会社が、11月13日、ステルスマーケティングをめぐり消費者庁から景品表示法違反で再発防止の措置命令を受けました。
インフルエンサーに報酬を支払って自社商品の宣伝をSNSに投稿してもらった後、PR表記をすることなく、あたかも第三者の投稿であるかのように自社サイトに転載したということです。

 

依頼した投稿を自社サイトに転載も“PR表記”なし


消費者庁は11月13日、大正製薬株式会社が行ったサプリメントに係る表示について、景品表示法等が禁じる『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(同法第5条3号、同号に基づく令和5年内閣府告示第19号)』、いわゆる「ステルスマーケティング告示」に該当すると認定。同法第7条1項の規定に基づき、措置命令を行ったと発表しました。

「ステルスマーケティング告示」とは広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す表示のことで、景品表示法で規制の対象となっています。

大正製薬はインフルエンサー3人に報酬を支払ったうえで、同社のサプリメント商品「NMN taisho」について、SNS インスタグラムで投稿するよう、広告代理店を通じて依頼。報酬としてインフルエンサーに対して約1万円を支払い、商品一箱(通常価格約3万円)を提供していたということです。

その後、大正製薬は4月19日から5月22日にかけて、同社のウェブサイト上にある「NMN taisho」の紹介ページにインフルエンサーらの投稿内容を転載したといいます。

紹介ページでは「Instagramで注目度上昇中⤴」、「品質にこだわりたい方には特許処方の大正製薬『NMN taisho』」などと表示し、商品をアピールしていましたが、インフルエンサーの投稿内容を転載する際、投稿がPR投稿であった旨の記載をしていなかったということです。

そのため、消費者庁は「第三者に対して依頼した投稿であることを明らかにしていない」として景品表示法に基づき再発防止などを命じる措置命令を出しました。

ちなみに、「NMN taisho」はアンチエイジングの成分を含むサプリメントで、2023年3月に発売されてから2024年4月までに約4億円の売り上げがあったということです。

大正製薬は今回の措置命令を受け、「厳粛かつ真摯に受け止め、今後、従業員に対し研修を実施し、また広告掲載前の社内確認を徹底する等の広告管理体制をより一層強化し、再発防止に努めてまいります」とコメントしています。

消費者庁による措置命令について(大正製薬株式会社)

なお、2023年10月にステルスマーケティングに対する規制が開始されて以来、措置命令が出されるのは今回で3例目だといいます。

 

初のステマ行政処分は病院口コミ


今年6月6日には都内の医療法人が、患者にGoogleマップで高評価の口コミ投稿を依頼し、その引き換えに割引を行ったとして、消費者庁から再発防止などを求める措置命令が出されました。
これがステルスマーケティングに対する、初めての行政処分となりました。

クリニックは、インフルエンザワクチン接種で来院した利用者に対し、Google マップの口コミを高評価することで、ワクチン接種料金を割引していたということです。
ステルスマーケティングを依頼した期間の口コミ投稿は通常の約35倍となり、そのほとんどに、最高評価である「星評価5」が付けられていたといいます。

消費者庁は、「表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった」とし、一般の口コミを装ったステルスマーケティング表示であると認定しました。

ステマに対する初の行政処分、クリニックが口コミ高評価を依頼(企業法務ナビ)

 

コメント


ステルスマーケティング規制への違反行為が認められた場合、事業者には措置命令が出されます。措置命令の内容としては、違反内容の差し止めのほか、違反事実の一般消費者への周知などが考えられます。

課徴金こそ課せられませんが、ステルスマーケティングを行った企業への信頼は下がり、結果として消費者が商品を敬遠してしまう事態も想定されます。

見落とされがちですが、いわゆる「広告」に限らず、自社HPにおける表示なども、このステルスマーケティング規制の対象となります。広告担当部署のみならず、マーケティング部門全体への丁寧な研修、法務部門における事前審査体制の構築などが求められます。

 

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