オリエンタルランドが自社株取得と消却へ、自己株式消却について
2024/11/28   商事法務, 総会対応, 会社法, エンターテイメント

はじめに

 「東京ディズニーリゾート」を運営するオリエンタルランドは26日、1800万株を上限に自己株式を取得すると発表しました。取得した自己株式は消却するとのことです。今回は自己株式の消却について見直していきます。

 

事案の概要

 オリエンタルランドの発表などによりますと、同社は26日開催の取締役会で1800万株の自己株式を取得する旨決議したとされます。取得価額の総額は752置く6000万円で、同社の株主である京成電鉄が同社株式を売却する意向である旨の連絡を受け、株式需給への短期的な影響を緩和し、既存株主への影響を軽減するために自己株式として取得し、消却するとのことです。取得の方法は11月26日の終値である3,435円で東京証券取引所の自己株式立会外買付取引によるとされ、取引時間限りの買付注文で買い付けるとのことです。株式の消却予定日は12月17日となっております。

 

自己株式取得の手続き

 自己株式の取得については先日も取り上げましたが、ここでも軽く触れておきます。自己株式を取得する場面としては、取得請求権付株式の取得や取得条項付株式の取得などの場合もありますが、ここでは株主との合意による取得に限って見ていきます。株主から会社が株式を買い取る場合には、原則として株主総会決議が必要となります(会社法156条)。全株主を対象とする場合は普通決議で、特定の株主から取得する場合は特別決議となります。また市場取引・公開買付の方法による場合は普通決議です。このように原則として株主総会決議を要しますが、例外的に取締役会決議で取得できる場合があります。まず取締役会決議によって剰余金配当ができる旨の定款の定めがある場合です(459条1項1号)。剰余金配当と株式を取得して払い戻す行為は本質的に類似しているからです。そして市場取引・公開買付の方法による場合は取締役会決議で取得できる旨を定款で定めている場合も同様に取締役会で可能です(165条2項)。この場合はすべての株主に売却機械が与えられ、また価格の公正さも担保されているため、予め取締役会に授権して迅速な取得を可能としております。なおこれら以外でも子会社が保有する自己株式を取得する場合も取締役会で可能です。

 

自己株式消却

 株式会社は保有する自己株式を消却することができます(178条1項)。自己株式を消却することにより、発行可能株式総数の範囲内で、発行することができる株式数を増加させることができます。これにより既存の株式とは異なる種類の株式の発行枠を増やすことができるというメリットがあります。手続きとしては、取締役会設置会社では取締役会決議で、取締役会非設置会社では取締役の過半数で決定します(348条1項、2項)。自己株式を消却しても発行可能株式総数は減少しませんが、その旨を定款で定めておくことも可能と言われております。なお公開会社において、発行可能株式総数が発行済株式数の4倍を超えてはならないという、いわゆる4倍ルールは株式消却には適用されておりません。また株式消却がなされても資本金に影響は無く、株券提供公告も不要です。

 

自己株式の処分

 自己株式の消却と似た言葉として、自己株式の処分というものがあります。消却は株式を消滅させてしまうのに対し、処分は株式の譲渡です。それにより資金を得ることができますが、自己株式の処分は実質的に募集株式の発行と同じと言えます。そのため199条1項では、「株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者を募集しようとするときは、その都度、募集株式について次に掲げる事項を定めなければならない」とし募集株式発行と同列に扱っております。つまり募集株式発行と同様に、公開会社では取締役会決議で、非公開会社では株主総会の特別決議が原則として必要ということです。募集株式発行と違う点としては、発行済株式数が増加しないまま資金調達ができるということが挙げられます。

 

コメント

 本件で京成電鉄では、同社が保有するオリエンタルランド株の保有数を削減するよう株主提案がなされていた背景があり、オリエンタルランド側も株主還元方針の一貫として今回の自己株式取得と消却を実施したとされます。オリエンタルランドでは定款の7条で、会社法第165条第2項の規定により、取締役会の決議によって自己の株式を取得することができるとの規定を置いており、今回はそれによって自己株式が取得されました。また今回活用された立会外自己株式取得制度はインサイダー規制の問題を回避しつつ大株主等からまとまった数量の買付が可能な制度となっております。自己株式の取得は市場で増えすぎて株価が下落した場合や、M&Aの対価として確保しておくなど様々なメリットもあります。どのような手続きで行えるのかを確認し、準備しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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