小林製薬の大株主が総会招集請求へ/株主総会招集権について
2024/12/06   商事法務, 総会対応, 会社法, 医療・医薬品

はじめに

 「紅麹」成分を含むサプリメントによる健康被害問題を巡り、小林製薬の大株主が同社に臨時株主総会の招集請求をしていることがわかりました。社外取締役の選任などを求めているとのことです。今回は株主総会の招集請求について見直していきます。

 

事案の概要

 先日も取り上げましたが、小林製薬の「紅麹」成分を含むサプリメント、「紅麹コレステヘルプ」等を摂取した消費者に腎機能障害等を引き起こす健康被害が発生したことを巡り、同社大株主である「オアシス・マネジメント」が当時の経営陣らに損害賠償を求めるべく提訴請求を行っております。それに伴い同株主は小林製薬に対して臨時株主総会の招集請求を行っているとされます。同株主の株式保有割合は7.54%とされ、6ヶ月以上前から引き続き保有しているとのことです。請求理由は社外取締役3名の選任および業務財産状況の調査者選任を求めることであり、現経営陣のみに抜本的改革を委ねることができないこととのことです。

 

株主総会の招集

 株主総会は原則として取締役が招集を行います(会社法296条3項)。その前提として、開催日と場所、目的事項がある場合はその事項、書面または電磁的方法による議決権行使ができるとする場合はその旨、その他について決定する必要があります(298条3項、4項)。これは取締役会設置会社では取締役会決議で、そうでない場合は取締役の過半数で決定します。招集に際しては開催日の2週間前までに招集通知を株主に発します(299条1項)。このように株主総会は取締役会決議や取締役の決定に基づいて、取締役が招集することとなります。しかし一定の要件の下に、株主が招集することができます(297条1項)。具体的には議決権の3%以上の株式を保有する株主(公開会社では6ヶ月前から引き続き保有)が会社に対して目的と理由を示して招集請求を行うことが可能となっております。

 

株主による招集手続き

 上記のように総株主の議決権の3%の株式を保有する株主は、会社に対して株主総会の招集を請求することができます。この総株主の議決権については、当該株主総会の目的である事項について、議決権を行使することができない株主が保有する議決権は参入しないとされます(297条3項)。会社に対し招集請求をしたにもかかわらず、遅滞なく招集の手続きが行われない場合、または請求日から8週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられない場合は、招集請求した株主は裁判所の許可を得て、自ら招集することができます(同4項1号、2号)。なお裁判所への許可申請をしても、許可決定が出される前に会社が請求日から8週間以内の日を開催日とする招集を行った場合は許可申請の利益を喪失し、裁判所は却下することとなります。

 

その他の少数株主権

 株主による株主総会招集のように、会社法では一定の株式数を保有することで行使が認められている、いわゆる少数株主権というものがいくつか存在します。まず(1)議決権の1%または300個の保有で株主提案が、(2)議決権の1%で総会検査役選任申立が、(3)議決権または発行済株式数の3%で会計帳簿閲覧・謄写請求と業務執行検査役の選任申立、役員解任の訴えの提訴が、(4)議決権の3%で役員の責任免除に対する異議権が、そして(5)議決権または発行済株式数の10%で会社解散の訴えの提訴権が認められております。このうち株主提案と総会検査役選任申立、役員解任の訴え、そして株主総会招集請求については、公開会社では6ヶ月前から引き続き保有することが求められております。

 

コメント

 本件で、サプリメントによる健康被害に揺れる小林製薬では香港系投資ファンド「オアシス・マネジメント」による旧経営陣への責任追求の訴えの提訴請求や新たに3名の社外取締役の選任を議題とする株主総会の招集請求がなされております。提訴請求、株主総会招集請求のいずれについても25年1月下旬までに会社によってなされない場合は請求した株主による提訴、招集が可能となる見通しです。以上のように会社法では一定の株式数を保有する株主に能動的に、本来会社が行うべき権限を行使する権利が認められております。近年投資ファンドなど、いわゆる「物言う株主」による積極的な株主提案や招集請求、株主代表訴訟などが増加しております。また上でも触れたように会社法の少数株主権の要件はかなり複雑なものとなっております。どれくらいの株式保有があればどのような権利行使ができるかを把握し、準備しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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