ホンダと日産が経営統合に向けた検討に係る基本合意締結、株式移転とは
2024/12/25 商事法務, 総会対応, 戦略法務, 会社法, メーカー
はじめに
本田技研と日産自動車は23日、経営統合に向けた協議を開始することについて合意し、共同持株会社設立による統合に向けた基本合意書を締結したと発表しました。効力発生日は2026年8月を予定しているとのことです。今回は組織再編スキームの一つである株式移転について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、本田技研と日産は今年3月に電動化・知能化に向けて戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結し、8月には次世代SDVプラットフォームに関する基礎的要素技術の共同研究契約を締結したとされます。また100年に一度といわれる車業界の変革期に対応し、グローバルで競争力を保ち続け、これまで以上に魅力的な商品・サービスを届け、存在を期待される企業であり続けるための選択肢として、経営統合に向けた協議を開始し基本合意書の締結に至ったとのことです。経営統合のスケジュールとしては、23日に取締役会決議と基本合意書締結、25年6月に最終契約書締結、26年4月に両社で臨時株主総会開催、同年7月末~8月に上場廃止、同年8月に効力発生とされております。
株式移転とは
株式移転とは組織再編スキームの一つで、新たに会社を設立し、既存株式会社の株式をすべて新設会社に取得させて完全親子会社とするというものです。完全子会社となる会社は1社だけの場合もあれば、複数の会社で行う場合もあります。後者の場合を共同株式移転と言います。これにより効率的に企業のグループ化が実現できます。なお似た制度として株式交換というものも存在します。これは既存の会社が既存の株式会社の株式を100%取得して完全子会社化するというものです。完全親会社となる会社が既存の会社か、新設する会社かの違いがありますが、いずれも完全親子会社化のためのスキームです。またさらに株式交付という制度も存在します。こちらは完全親子会社化ではなく単に親子会社化するためのものと言えます。
株式移転の手続の流れ
株式移転の手続の流れとしては、おおまかに(1)当事会社間での交渉、(2)株式移転計画の策定、(3)取締役会での承認、(4)事前開示書類の備え置き、(5)反対株主の株式買取請求通知、(6)株主総会での承認決議、(7)効力発生と登記、(8)事後開示書類の備え置きとなります。なお株式移転完全親会社は設立登記によって発生し、こちらでも事後開示書類の備え置きを行います。合併や株式交換などと異なり株式移転などの新設型組織再編では基本的に対立する当事会社というものが存在しないため「契約」ではなく「計画」を策定することとなります。組織再編では株主総会の2週間前、債権者異議手続の公告日、反対株主への通知日のいずれか早い日から効力発生日の6ヶ月後まで本店に事前開示書類を備え置くこととなります。事後開示書類も設立から6ヶ月間備え置くこととなります。
債権者異議手続等
会社のM&A、組織再編では多くの場合で債権者異議手続(債権者保護手続)が必要となってきます。債権者異議手続とは、官報で公告を行い、知れている債権者に個別に催告をするというものです。官報での公告に加えて、定款で定めている日刊新聞または電子公告を行えば個別催告は省略できる場合があります。これにより債権者から異議が申し立てられた場合、会社は弁済か担保提供または信託をすることとなります。それでは株式移転でも債権者異議手続は必要なのでしょうか。結論から言うと原則として株式移転では債権者異議手続は不要です。他の組織再編と異なり株式移転では株主が変わるだけだからです。例外的に、完全子会社となる会社が新株予約権付社債を発行しており、これを新設会社に承継させる場合には必要となってきます。債務者が交代することとなるからです。これは株式交換でも同様です。そして株券を発行している場合は会社が設立される日の1ヶ月前までに株券提供公告も必要です。
コメント
本件でホンダと日産は共同持株会社を設立し、両社の株式を移転する共同株式移転の方法によるグループ化を検討しているとされます。経営統合後の持株会社の経営体制については、取締役や社外取締役の過半数をホンダが指名する予定とのことです。株式移転により両社の既存株主は新設会社の株式を取得することとなり、ホンダ、日産両社の上場廃止に代わって新設会社が新たに上場するとされます。以上のようにホンダと日産は現在、株式移転によってグループ化することが検討されております。合併や片方が片方を子会社化する方式ではなく、新たに設立した会社の傘下に両社が入るというスキームです。これにより両社の個性や強みを保持したまま連携を強めることが期待できます。これまでも取り上げてきたようにM&A、組織再編には様々な手法が用意されております。自社に適したスキームを検討していくことが重要と言えるでしょう。
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