住宅セーフネットへの信頼揺らぐ
2011/07/12 不動産法務, 民法・商法, 住宅・不動産
またもや、公営住宅で家賃取り過ぎ
京都府は、府営住宅西大久保団地で13年3か月にわたり家賃の過大徴収があったことを明らかにした。対象となるのは転居者も含めた307世帯で、過大徴収の総額は約7000万円にも上るという。98年の公営住宅法の改正で家賃の算定方法を変更した際、算定根拠となる住居専用面積に、加える必要がない共有部分やベランダ部分を足して計算したことが原因で、先月末に府住宅供給公社職員の指摘で発覚した。京都府は、7月からは適正な家賃に戻した上、世帯ごとの過大徴収額が判明次第、全額返還を約束するとともに、既に府内全体を対象に同様のミスがないかの調査を始めたという。
繰り返される同種の事件
公営住宅での家賃の過大徴収は今回が初めてではない。これまでも鳥取県の邑南町の県営住宅で51世帯から7年間にわたり合わせて350万円を過大に徴収しており、また、宮崎県の三股町の町営住宅では442世帯から13年間にわたり合計6000万円以上の家賃の過剰徴収の事実が発覚した。公営住宅の家賃については、借主側の家賃の不払いの問題が取り上げられがちだが、貸す側の行政にも不祥事は絶えないのである。公営住宅の家賃は世帯の収入に国や自治体が定める係数を乗じて決められるため、行政側への信頼が不可欠である。その基盤を揺るがす過大徴収が引き続き発覚することは深刻な意味をもつ。
総評
公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する役割を担うものであり(公営住宅法1条参照)、住宅セーフネットして存在している。家賃の問題は最も気を配るべき問題の一つであろう。また、返還すれば良いという問題ではないが、返還についても一度支払ってしまった家賃を当時の収入に応じて適正に計算しなおせるのか、転居してしまった者に確実に返還できるのかなど、問題の収束は容易ではないように思われる。全国の自治体はこれまでの不祥事を他山の石として、自らの自治体について再調査し、同種事件の再発を防ぐことに真剣に取り組むべきである。
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公営住宅法
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