クレジットカードのショッピング枠の現金化業者ついに逮捕!
2011/08/06 消費者取引関連法務, 出資法, 金融・証券・保険
クレジットカードのショッピング枠の現金化業者ついに逮捕!
警視庁は5日、クレジットカードのショッピング枠を現金化する手法で高金利の融資をしたとして、元貸金業者で飲食店経営の橋本幸治容疑者を出資法違反の容疑で逮捕した。
ショッピング枠現金化のカラクリ
1.ショッピング枠とは
クレジットカードには、キャッシング枠が付いているが、これを使い切ると、通常はそれ以上はお金を借りることが不可能になる。しかし、キャッシング枠がいっぱいでも、ショッピング枠が残っていれば、カードを用いての買い物は依然として出来る。
2.ショッピング枠の現金化
(1)一般的な手法
ショッピング枠を使って、商品券やチケット等の金券を購入し、これを売却する。これにより、現金が生まれる。融資を必要とする債務者にとっては、救いの綱となる。
(2)橋本容疑者の用いた手法
今回逮捕された橋本容疑者は、ショッピング枠を使って、顧客に自身の販売するネックレス等をカードを用いて50万円で購入させ、ネックレスを郵送し、その後「キャッシュバック」と称して40万円を渡していた。
3.橋本容疑者の脱法行為
橋本容疑者と顧客との関係を見ると、一見、ただの売主と買主であり、キャッシュバックという形で40万円を渡しただけのように見える。しかし、警視庁は以下の点から、今回の売買があくまで形式的な売買に過ぎないと判断した。
(1)ネックレスは実際は30円~120円のほぼ無価値のもの。
(2)顧客は商品を選べない。
(3)商品の発送があるのは初回のみ。2回目以降のネックレス購入者には、実際には商品の発送は行っていなかった。
つまり、橋本容疑者は売買契約を装って、50万円を顧客に融資。その際、利息として10万円を天引きしたことになる。
顧客は最終的には50万円をカード会社に支払わなければならない。その支払いが2か月後だったとすると、2か月で40万円が50万円になるのだから、この期間の利息は12.5%。年換算すると、150%。とんでもない暴利で50万円を借りたのと同じ負担を負うことになる。
出資法
(第5条)
金銭の貸付けを行う者が、年109.5パーセント(2月29日を含む1年については年109.8パーセントとし、1日当たりについては0.3パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2.前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年29.2パーセント(2月29日を含む1年については年29.28パーセントとし、1日当たりについては0.08パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3.前2項に規定する割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者は、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
雑感
これまで、このようなカード現金化の手法については違法性が疑われながらも、貸付と商品売買との線引きが難しく、貸金業法を所轄する金融庁も明言を避けてきた。一方で、カード会社は換金目的での使用を規約で禁じていることから、業者についてカード会社を騙したとする詐欺罪の適用も検討されたが、被害者である顧客も共犯に問われる可能性があることから断念していた。
警視庁は今回、はじめて、出資法違反での摘発に踏み切ったが、いまだ司法の判断はないことから、このようなカード現金化の手法が違法かどうかは明確でない。摘発はしたものの、無罪放免という可能性もいまだあるのだ。
また、今回の警視庁の摘発の基準を踏まえ、
(1)価値判断が困難な自作の壺や絵画等を販売。
(2)複数の自作商品から選択させる。
(3)必ず商品は発送する。
このような業者が出て来た場合には、摘発それ自体が困難となるであろう。とは言え、法定金利を大きく超える債務の負担に苦しむ者が後を絶たないのも事実である。
「売買契約の自由(原則として、いくらで何を買うかは国民の自由である)」と「債務者の保護」。両者のバランスを図りながら、カード現金化を規制する立法が早急に求められる。
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