続発する成年後見人の不正にメス!「後見制度支援信託」導入へ。
2011/11/10 法務相談一般, 民法・商法, その他
続発する成年後見人の不正にメス!「後見制度支援信託」導入へ。
最高裁は、続発する成年後見人の不正着服を受け、来年2月をめどに、後見人が家庭裁判所の審査を経た上で必要額を信託銀行から引き出す「後見制度支援信託」を導入すると発表した。
今後、「後見制度支援信託」は成年後見に加え、未成年者の後見も対象となる。同信託を利用するか否かは、家庭裁判所が被後見人の財産状況などを見て判断することになる。
※成年後見制度※
加齢や病気等が原因で判断力を十分に有しない人のため、裁判所が援助者=「後見人等」を選任し、財産等の管理を行わせる制度。本人や家族などの申し立てを契機に援助者は選任され、援助者には主に、家族・弁護士・司法書士らが選ばれる。
成年後見制度の問題点
現状、家庭裁判所は後見人に対し、財産の管理状況についての報告書の提出を求め、金融機関に対し、預金口座の照会をする等して、適正な財産管理が行われているかを確認する。だが、いずれのチェック手段も事後的なものに過ぎない上、後見人に対する報告書の提出は、強制はできない制度となっている。
成年後見人には、前述のように、家族や弁護士・司法書士らが選ばれるが、特に家族等が成年後見人となった場合の不正着服が目立っている状況である。一方で、弁護士や司法書士等の専門職に後見人を依頼した場合には、こういった不正は防止できるものの、その報酬が極めて高く、コスト面での懸念がある。
そのため、低コストで被後見人の財産を守る制度の構築が急務となっていた。
後見制度支援信託
同信託を利用する場合、後見人は日常で使う生活費等を一般口座で管理する一方、それ以外の当面使う必要のないまとまった財産を信託銀行に預けることとなる。(元本が保証される信託契約を締結)
被後見人に急な支出の必要が生じた場合には、後見人が家庭裁判所にその旨を申請し、家庭裁判所は支出目的と必要性を調査した上で許可を付与、信託銀行は家庭裁判所の許可を受けて、必要額の払い戻しを行う。
また、日常の生活費等の口座についても、その収支が赤字になると想定される場合には、信託銀行は定期的に一定額を補充分として振り込むこととなる。
雑感
後見制度支援信託の利用により、裁判所の指示書(許可)に基づいて信託銀行が被後見人の財産を管理することとなるため、財産の安全・確実な保護が期待できるという。
また、日常的な支出に加え、医療費等の突発的な支出も生じうる中での「長期的な現金・預貯金管理」は、専門家でもない限りかなり困難な業務だが、同信託の利用により、こういった財産管理の面での後見人の負担の軽減も期待される。
一方で、被後見人の財産保全に主眼を置く同信託に対しては、「結果として、被後見人の財産利用を抑制することになるため、その分、生活の変化や意思に応じた柔軟な財産管理が困難になり、硬直的で画一的な後見業務しか行えなくなる」との批判もある。
しかし、高齢化社会の到来と共に、後見制度利用者の増加が予想される中で、不正着服が増加の一途をたどることは目に見えている。様々な苦労を乗り越え生涯をかけて築き上げてきた財産を、不正に着服されることほど残念な老後はないであろう。
同信託に対しては、現状、懸念がないわけではないのだが、まずは、その船出を温かく見守りたい。
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