集団賠償訴訟で消費者救済の拡充へ
2012/02/06 消費者取引関連法務, 民法・商法, その他
Ⅰ、概要
消費者被害を広く救済するための新しい訴訟制度作りが現在行われている。消費者庁は現行制度改善のための新制度を作成、今国会に法案を提出する。
現行制度では、不当行為の差し止めを請求を出来るにとどまり、損害賠償を請求する場合には消費者個人が訴訟を提起しなければならない。しかし、請求する消費者側が立証責任を負うところ、個人では証拠が乏しく立証は困難である。また、訴訟費用と時間等の負担から個人が訴訟を起こすこと自体が大きな壁であり、泣き寝入りが多いのが現状である。
新制度は、まず①消費者庁が認定する特定適格消費者団体が、被害を起こした業者に契約無効などを求める訴えを提起する。そして②勝訴すれば、同様の被害を受けた消費者に新たに損害賠償訴訟への参加を呼びかけ、被害額をまとめて業者に請求する、という二段階の手続きとなっている。
一段階目である程度勝訴の見込みを立てて、二段階目から加入することができるため、被害を簡易・迅速に回復することができるようになる。また、消費者団体が証拠収集することで個人より証拠を多く集められる。
しかし一方で、乱訴により会社の競争力が低下するのでは危惧がある。そのため、新制度は、製品事故、食中毒、ネットでの個人情報流出など外し、訴訟対象を限定している。また、消費者適格団体の認可要件を厳格にすべきとの意見もあるが、これに対しては訴訟の担い手が減少し制度が形骸化するとの反論がある。
他に課題としては、実態のない業者にどう対応するかという問題や、新あ制度が現実となれば特定適格消費者団体の負担増は必死であり、その人的・経済的基盤をどう強化するかという問題がある。
Ⅱ、コメント
集団賠償による企業の負担は巨額となると思われるし、乱祖により企業活動が萎縮して経済の発展を妨げる危険があるというのも、確かにその通りである。
しかし、消費者被害は後を絶たないのが現状である。かような状況は消費活動の萎縮につながり、かえって経済に悪影響である。国民の経済活動の自由を保障する上でも、現状よりも消費者保護の比重をより大きくするべきではないだろうか。こうしている間にも各地で消費者被害は起こっている。活発な経済の実現とその適正確保を両立を志向しつつ、いち早い消費者救済に向け集団賠償制度の早い実現が求められる。
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